第二次世界大戦中のユダヤ人問題を、6歳の息子に説明するためには
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6歳の息子は、ひらがなとカタカナと少々の漢字を読む。家の本棚を見て「これ、なに?」とか「どういう意味?」と聞かれることが増えてきた。説明が容易でない場合は「あとでね」と答えるが、何度か問われるうちに、子どもにも理解できる言葉で話すようになる。この年頃の子どもに話すのに適切な言葉を慎重に選びながら。

「いえるされむのあいひまん、ってどういう意味?」と聞かれた時、最初は「ちょっと待ってね」とかわしたが、後日、電車の中でもう一度聞かれたので腹をくくって説明した。『決定版 心をそだてるはじめての伝記101人』(講談社)で 「アンネ・フランク」について読んでいた6歳児には、おおよその意味が分かったようだ。

自分の政治信条を貫くことだけではすまない難しさ

そんな息子と毎週末のように、地元の図書館へ行く。建物は古く蔵書も多いとはいえないが、混んでいないのはありがたいし、私たちに必要なものは大抵そろっている。ある週末、子ども用の低い机に向かい、恐竜の図鑑を眺める息子の隣で、私は『ユダヤ人を救った動物園』(亜紀書房)を読んだ。

ナチス・ドイツ支配下のポーランド。首都ワルシャワ近郊の動物園で、300人ものユダヤ人を匿い、その命を救った動物園長夫妻の物語だ。表紙にある「ユダヤ人」という字の並びを見た息子は「これ、アンネ・フランクの話?」と聞いてきた。「そうだね。アンネは隠れていた場所を見つかって殺されてしまったけれど、これは、動物の毛皮に人を隠して助けた人の話だよ」という説明にうなずいていた。

匿うことの難しさは、単に発覚を免れることに留まらない。ナチス占領下のポーランドで、ユダヤ人に便宜をはかる者は死罪とされたから、それは、自分だけでなく家族をも危険にさらす行為だった。動物園長夫妻には小さな男の子がいて、ことは単に自分たちの政治信条を貫くことだけではすまない。

夫婦はともに青酸カリを持ち歩いていた。ゲシュタポに密告されたら、拷問による自白を強要される。家族や匿っている人たちを巻き込む前に自殺するつもりだったのだ。

ナチスにより殺されたユダヤ人の数は全ヨーロッパで500~600万人とされる。算出の根拠や数値を巡る議論については、ハンナ・アーレントにナチズム分析のデータを与えた 『ヨーロッパ・ユダヤ人の絶滅(下巻)』(ラウル・ヒルバーグ著、望田幸男他訳/柏書房 )の397ページ以降にある詳細な「ユダヤ人の死亡者統計」に目を通すのが良いと思う。

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