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これが中国4000年の権力闘争だ「粛清と陰謀」が日課あな恐ろしや、習近平
超大物・周永康の逮捕で、歴史はまた繰り返される
〔PHOTO〕gettyimages

まるで昨年末、北朝鮮の金正恩が大幹部の張成沢を処刑した時のような粛清劇が、中国で起こった。日々粛清を繰り返す習近平と、震え上がる幹部たち。この未成熟な巨大国家は、どこへ向かうのか?

「天安門」以来の大事件

〈周永康の重大な規律違反容疑に関して、中国共産党中央委員会は決定した。「中国共産党章程」と「中国共産党規律検査機関案件検査工作条例」の関係規定に基づき、中国共産党中央規律検査委員会は本件の審査を立件する〉

7月29日午後5時59分、このわずか漢字69文字のそっけない記事が、中国国営新華社通信から配信されると、中国全土が震撼し、世界のトップニュースとなった。

周永康—わずか2年前の11月まで、世界最大の政党・中国共産党8668万人の序列9位に君臨した中央政治局常務委員である。担当は法務と公安で、全国250万の警察組織を牛耳っていた。1989年の天安門事件で、趙紫陽総書記が失脚して以降、中国政界で最大級の大物の失脚である。

産経新聞北京支局の矢板明夫特派員が語る。

「これまで、『刑不上常委』(刑は常務委員には及ばない)という不文律が中国政界にあったのですが、今回習近平主席は、このタブーを破りました。周永康は、江沢民元主席の忠実な僕として、石油利権と公安(警察)利権を握っていた大物政治家です」

この大物政治家に、いったい何が起こったのか?

本誌は、中国の公安当局が参考にしたと言われる「周永康人脈図」を入手した。そこには、「親族」8人、「石油系」11人、「法政系」4人、「四川系」15人、「その他」1人と、計39人の周永康に連なる「悪徳人脈」が記されている。

1942年に江蘇省無錫で生まれた周永康は、文化大革命が始まった'66年に、北京石油大学を卒業した。卒業後は、黒竜江省にある中国最大の大慶油田に、石油採掘の技術者として就職した。

北京在住ジャーナリストの李大音氏が解説する。

「周永康は青年時代、毛沢東が全国の若者や労働者を動員して、『造反有理』(造反には理がある)をスローガンにナンバー2の劉少奇以下、最高幹部たちを血祭りに上げた文化大革命を目の当たりにした。そしてそんな毛沢東主席に憧れ、自分も権力者となるべく、権謀術数を尽くして、一介の技術者から出世の階段を駆け上がっていった。具体的には、妻の叔母の夫だった江沢民の『汚れ役』を引き受け、巨大な石油利権を江沢民に捧げることで立身出世したのです」

前述の天安門事件の際、最高実力者の鄧小平が、戦車部隊を天安門広場に突入させ、1000人以上の若者を虐殺。これに反対した趙紫陽総書記を直ちに粛清し、上海市党委書記(上海市トップ)だった江沢民を、3段跳びで共産党総書記に抜擢したのだった。李大音氏が続ける。

「北京に人脈もカネづるもない江沢民に近づいた周永康は、遠戚ということで中国最大の国有石油会社の中国石油天然気総公司の党書記兼社長にしてもらった。そして莫大な石油収入の中から裏金を作って、せっせと江沢民に違法献金をしたのです。

江沢民はそのカネを使って、当時最大の政敵だった『北京のドン』こと陳希同北京市党委書記を収賄罪で逮捕し、16年の刑で監獄にブチ込んだ。これに気をよくした江沢民主席は、全国の国土資源を統轄する国土資源部を創設し、周永康を初代国土資源部長(大臣)に抜擢。周と二人三脚で国土資源全体の利権が自分に転がり込むシステムを構築したわけです」

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