特集 進む老朽化に対策急務
全国79カ所 改修に国と自治体の補助制度創設[地下街再生]

地下街の一斉点検で天井裏から見つかった、さびついて切れた鋼材=国土交通省提供

全国の都市部の主要な駅などに作られた地下街の老朽化が問題になっている。国土交通省の調査では約9割が開設から30年を超えており、耐震診断が行われていないところも半数近くあるという。公表されている首都直下地震や南海トラフ巨大地震の被害想定では、天井などの崩落で多数の要救助者が発生するとされている。地下街はショッピングや飲食などの店舗の客ばかりでなく、公共用通路として多くの人が利用する歩行空間としても都市生活者には欠かせない施設になっている。こうした重要な都市機能を今後、どのように再生し維持していくかが大きな課題になってきている。

地下街について、国交省は「地下駅の改札口外の通路、コンコースなどを含む公共の用に供される地下歩道と、当該地下歩道に面して設けられる店舗、事務所、その他これらに類する施設とが一体となった地下施設」と定義し、公共の道路や駅前広場の下も含むとしている。

毎年のように完成する地下街もあれば廃止されるものもある。国交省によると、この定義に見合う地下街は7月末現在で全国に79カ所あるという。その多くは、高度経済成長期に車と人の交通が混み合ったことなどから、人が集まるターミナル駅などで道路や駅前広場の地下空間を活用するために、地下に公共用通路などと店舗が一体的に整備されたものだ。こうした公共用通路は地下街店舗の利用者だけでなく、多くの市民が行き交う生活空間にもなっている。

国交省は今年4月、地下街の管理者向けに自己点検のチェック項目などをまとめた「地下街の安心避難対策ガイドライン」を作り、点検と災害時の避難計画の検討方法を示した。改修にかかる費用の3分の2を国と自治体で負担する補助制度も今年度に創設し、管理者への説明会などを通じて安全対策の徹底を促している。

しかし、補修費の補助制度を設けても、老朽化対策や安全点検の実施はそれぞれの管理者に委ねられており、運営主体や個別的な事情もさまざまなためどこまで進むかは不透明という。

このガイドラインを作るために、国交省は昨年3月までに当時あった78カ所の地下街の実態調査を実施した。そのうち46カ所は民間会社、31カ所は第三セクターの管理で、公営は神奈川県小田原市の地下街だけだった。

耐震診断をしているのは半数以下

開設から30年以上経過している地下街は、68カ所で全体の87%にのぼった。耐震診断をしていたのは49%の38カ所で、その結果、耐震改修が不要だったのが19カ所だった。実際に耐震改修をしていたのは12カ所で、耐震改修が必要なのに実施していないところが4カ所あった。また耐震改修の一次診断だけで詳細な診断や改修方針を立てていない施設も3カ所あった。

地下街は地下空間の安全性確保が重要なため、この調査では、地下街利用者の避難にも影響を与える天井の構造などを重点的に調べ、三つの問題点を指摘している。

一つは漏水による天井下地などの不具合だ。地下街は構造全体が土中にあるため、地下水の漏水が起こりやすいことから、漏水に起因するシミやコンクリート中の水酸化カルシウムが表面に溶け出すコンクリートの「白華現象」などが起きやすい。目視点検でこうした不具合が多数発見された。国交省は、外観で漏水が疑われ、直近に点検口がない場合は、状況確認や継続的観察のための点検口の新設が必要としている。

また、天井材や天井をつり下げている部材の脱落が見られたとも指摘。天井内部のハンガーが脱落するといったつり材が機能を果たしていない不具合も多く確認されたという。さらにコンクリートの打設不良のジャンカや鉄筋の露出、コンクリート断面の欠損なども見つかっている。

国交省は「今回の一部の点検口からの調査でも、天井下地の不具合が発見されている。全ての点検口から点検を早期に実施することが必要」と結論付けた。地下街は公共用通路を有しているため全面的な改修は難しいが、ガイドラインは地下街の管理者の自覚を促している。

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