規制委が川内原発の審査書案了承
新規制基準で始めて 今年10月にも再稼働へ[原子力]

九州電力川内原発1、2号機の審査書案について説明する原子力規制委員会の田中俊一委員長=東京都港区で7月16日

原発の新規制基準に基づく安全審査で、原子力規制委員会は九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)の審査書案を了承した。事実上の「合格証」といえ、東京電力福島第1原発事故を教訓に強化された新規制基準をクリアする初の原発となる。国民からの意見公募や地元同意を経て、今年10月にも再稼働する見通しだ。政府は新規制基準を「世界で最も厳しい水準」とし、規制委の審査に合格した原発の再稼働を進める方針だが、川内原発以外の原発の稼働時期はいまだに不透明なままだ。事故に備えた自治体の避難計画策定は遅れており、火山対策などの不備を指摘する声も出ている。

昨年7月に施行された新規制基準は、地震や津波対策を強化し、火山噴火や竜巻など自然災害への備えを盛り込んだ。福島第1原発事故のような過酷事故についても電力会社に対応を義務づけた。

川内原発の審査書案は約420ページあり、規制委は九電が示した地震や津波の想定、事故対策などを個別に検討した。想定する地震の最大の揺れ「基準地震動」を従来の540ガル(ガルは加速度の単位)から620ガルに、想定する最大の津波の高さ「基準津波」を約4メートルから約6メートルに引き上げたことを妥当とした。

過酷事故への対応は、幅広い事故の想定▽事故時の作業要員の確保方法▽機能喪失を防ぐ設備の準備――などを求め、九電が示した対応策をいずれも了承した。

規制委の田中俊一委員長は「一定程度安全性が高まったと思う。ただし、これがゴールではない。(事業者は)ますます努力していく必要がある」と述べている。

川内原発を含めると、12原発19基が新規制基準に基づく規制委の安全審査を受けている。

川内原発がモデルケースとなることで、残りの原発の審査も加速するとみられる。規制委は今後、川内原発と同じ昨年7月に再稼働申請をした関電高浜原発3、4号機(福井県)、四国電力伊方原発3号機(愛媛県)、九電玄海原発3、4号機(佐賀県)の本格審査に移行することになる。

しかし、高浜3、4号機は基準地震動を引き上げたため、追加工事が必要となるなど、川内原発以外の再稼働の先行きは不透明だ。

曖昧な再稼働判断の責任

審査書案の提示を受け、安倍晋三首相は「安全という結論が出れば、立地自治体の理解をいただきながら再稼働を進めていきたい」と語った。菅義偉官房長官も「個々の再稼働は事業者の判断だ」と述べ、あくまでルールに従った再稼働との姿勢を示している。結果として、再稼働の判断は電力会社と立地自治体に委ねられ、国の責任は曖昧なままだ。

関西電力大飯原発3、4号機(福井県)の再稼働に際し、野田佳彦首相(当時)が稼働を政治決断し、批判を浴びた民主党政権の轍を踏みたくないという思いが、安倍政権にはあると見られる。

経済界は再稼働に向けた動きを歓迎する。日本商工会議所の三村明夫会頭は「待ちに待っていた。これで次のステップに進んだ」と評価し、他の原発も含め再稼働の早期実現への期待を表明した。

だが、規制委の審査に合格したとしても、事故のリスクは残る。田中委員長は「安全というとゼロリスクと誤解される。できるだけリスクを下げるための審査をしたということだ」と話している。

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