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2014年08月16日(土)

『ソーシャルインパクト』【第3回】三方よしの「ビジネスモデル」のデザインー武雄市図書館の挑戦

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『ソーシャルインパクト〜価値共創(CSV)が企業・ビジネス・働き方を変える』(産学社)より抜粋

第1回はこちらからご覧ください。
第2回はこちらからご覧ください。

武雄市図書館のビジネスモデル

筆者の玉村雅敏

武雄市図書館のビジネスモデルについて、もう少し詳しく見てみましょう。前述したように、CCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)と武雄市がPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)を形成している新しいタイプの公共施設です。

指定管理者のCCCによる運営の工夫を随所に採用した斬新な公共図書館ですが、単に民間企業の運営手法を採用したというだけではありません。市民生活を豊かにする場を実現するために、必ずしも、これまでの公共図書館の常識にはとらわれない発想からスタートしているのが特徴です。

その発想とは、「市民価値」の追求です。CCCは、顧客にとっての価値とは何か、顧客にとっての意味とは何かといった「顧客価値」の視点でTSUTAYAの全国展開というビジネスモデルをつくりあげました。一方、武雄市の図書館では、その公共性を踏まえて地域住民の「市民価値」を追求することからスタート。図書館運営を再設計したのです。

その際、CCCは、行政や企業の論理よりも、サービスを受ける武雄市民の立場を重視しました。武雄市民にとっての、そして市民価値を高める場としての図書館はどのような姿が理想なのか。それを追求していったのです。そうして実現したのが、次の8つの要素です。

①開館時間の変更:10〜18時の開館を9〜21時に。年331日の開館を年中無休に
②蔵書の拡充:開架約10万冊から約20万冊に。自由にアクセス可能に
③カフェ:スターバックスが併設され、閲覧席は92席を増設。閲覧スペースにも飲料の持ち込みが可能に
④雑誌:カフェ席の横にあるマガジンストリートの開設。図書館で雑誌も購入可能に
⑤映画・音楽:音楽フロアには約8万枚のCD・DVDなどが備えられ、有料での借出が可能
⑥検索/IT:一般的な日本十進分類法から22進の分類法に。iPad が検索用に13台、貸出用に17台の計30台あり、インターネットにも接続できる
⑦ポイント:Tカードを採用し、セルフカウンター利用で1日1回3ポイント貯まる
⑧ノウハウ:代官山蔦屋書店の運営ノウハウを活用 

他にも、著名な作家を招聘した講演会などの開催は、CCCとの連携により実現できている新しい市民価値です。公共施設である図書館は、社会インフラであり、いつも開いていて、いつでも使えることが理想的です。会社の帰りに行こうと思っても、すでに閉まっていたり、たまたま立ち寄ってみたら閉館日だったりと、これまでの公共図書館は市民生活にフィットしにくい施設でした。そこで、武雄市図書館は、市民価値を前提に開館時間を改善し、年中無休、9〜21時開館とし、利用時間は1.5倍、利用日数は1.1倍に増やすことにしました。

『ソーシャルインパクトー価値共創(CSV)が企業・ビジネス・働き方を変える
玉村雅敏編著 横田浩一・上木原弘修・池本修悟著 

青学社/1800円+税
人のつながり(ソーシャル)という資源を、ビジネスに活かせていますか?人と人のつながりのネットワークを機能させ、価値共創の好循環を生み出す、「ソーシャルインパクト」。モノが売れにくい成熟時代に、このソーシャルインパクトを企業戦略や経営資源のひとつとして活用する実践事例が、企業、自治体、NPOなどの垣根を越えて、いま日本中で続々と現れています。本書では、さまざまな分野の専門家による約200社の調査にもとづき、他人ごとの空気を変え、共感の連鎖を巻き起こした仕組みを紹介。ソーシャルインパクトが変える、市場・マーケティング・働き方・組織のあり方、そしてチームのつくり方を解説します。成熟企業にイノベーションを起こすヒントが詰まった1冊。
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