ロス疑惑、薬害エイズなどを担当した『無罪請負人』弘中惇一郎弁護士が語る「検察から無罪を勝ち取る方法」
左:山口真由弁護士、右:弘中 惇一郎弁護士/撮影:阿部岳人

刑事弁護における第一人者であり、ロス疑惑や薬害エイズ、厚生労働省・村木厚子さんの冤罪事件など、数々の著名事件を担当した弘中惇一郎弁護士。4月に書籍『無罪請負人 刑事弁護とは何か』を刊行した記念として、著作やテレビ出演で話題を集める、弁護士の山口真由さんと対談を行った。検察組織の実態や若手弁護士が進むべき方向性とは――?

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『無罪請負人』著:弘中 惇一郎
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山口: はじめまして。今日は先生のお話を伺うのをすごく楽しみにしてきました。よろしくお願いします。

弘中: こちらこそ、よろしくお願いします。

山口: 先生は刑事弁護人として闘うイメージがあるので、きっと厳しい方なんだろうなと思っていましたが、お会いしてみて優しそうな方で安心しました。

弘中: 僕がテレビに出るのは記者会見のときが多いから、どうしても怖い印象をお持ちの方が多いみたいですね。

山口: 「カミソリ弘中」の異名もありますもんね(笑)。今日はまず先生に伺いたいことがありまして。今年、先生の事務所がリクルートのブースを出されたときに、企業法務に興味があるとチェックを付けた人は全員落としたと聞いたのですが、本当ですか?

弘中: うん、ほんと(笑)。

山口: 本当なんだ! 私が在籍している事務所は企業法務がメインなので、先生はこの法分野がお嫌いなんじゃないかってすごくドキドキしていたんです・・・。

弘中: いやいや、企業法務をやっている弁護士を嫌っているなんてことはありませんよ。ただ僕は企業法務をやらないし、うちの事務所にとっても中心テーマではないというだけのことで。

山口: そうなんですね。なんとなくホッとしました。

先生の著書『無罪請負人』を拝読しました。発見がたくさんあってとてもおもしろかったです。先生は、“人”を基準にして担当する事件をお選びになっているんですよね。被告人に寄り添って弁護されているのが印象深かったです。

弘中: 人を基準にしているというか、「この人と一緒に闘えるか」という点を重視しているだけのことなんですよ。本にも書きましたが、依頼人との信頼関係が弁護活動の大前提にあると思っています。私がこれまで弁護を務めた、三浦和義、安部英、小沢一郎、堀江貴文ら各氏は、世間的には悪人とされていましたけれど、すべて直接お会いして納得してから引き受けているので、彼らを疑ったことは一度もありません。それからもうひとつ、私にとって非常に重要なのが「おもしろい事件と思えるか」ということ。事件への純粋な好奇心や依頼人を助けたいという思いが、大きなモチベーションになって弁護の工夫やアイデアにつながるんですね。

山口: とても勉強になります。あと、この本にはスケールの大きな話が多いですよね。国策捜査にもかなり踏み込んで書かれていて、そこも非常におもしろいと思いました。大きな刑事事件で検察と対峙しているときっていうのは、やっぱり「国家」と闘っているようなお気持ちになるものなんですか?

弘中: それは少なからずありますね。

山口: 「事件は時代を映す鏡だ」という言葉がありましたけど、大きな刑事犯罪が国家権力によって作られるというのが印象的です。まず犯罪ありきで捜査を始めるという。