郵政問題で露呈した「小沢・亀井政権」の正体
菅や仙谷の抵抗など軽く一蹴

 郵政改革法案をめぐる鳩山由紀夫内閣のごたごたは結局、当初の亀井案通りであっという間に決着してしまった。前回のコラム(「消費税免除まで打ち出した「郵政改革法案」亀井のホンネ」)で書いたように、私はもしかしたら政権内政局に発展し、亀井が妥協して収まるシナリオもあるかと思っていた。だが、とんだ見込み違いだった。

 予想が外れたのは、鳩山首相はともかく菅直人副総理兼財務相、仙谷由人国家戦略相はもうちょっと骨があると思っていたからだ。

 ふらふらする鳩山を菅、仙谷の2人が支えて3人が束になって対抗すれば、亀井とガチンコ対決になっても、少しはがんばれるだろうと思っていたのだ。

 残念ながら、新トロイカ3人組には、そんなガッツはなかった。読者には、見通しの甘さを伏してお詫びする。

 この一件であきらかになったのは、民主党は郵政改革について、なんら定見がないということだ。

 民主党は2005年の郵政解散に伴う衆院選では「郵貯、簡保を徹底的に縮小し、官から民へ資金を流します」と公約していた。郵貯の預け入れ限度額は500万円への引き下げをうたっていた。今回の見直しとは正反対の方向である。

 鳩山首相は「最初のとき(05年)とはスキームが違うので当然、預け入れ限度額に差があってしかるべき」と語っている。当時は国有化だったが、今回は国が保有する持ち株会社の株式を三分の一超にするから違うと言いたいらしい。今回も実質国有化であり、鳩山の説明がまやかしであるくらい、国民はすぐ分かる。

 鳩山は当初、亀井案を「私は了解していない」と言っておきながら、ころっと態度を変えてしまった。こういう鳩山の豹変ぶりには、もはやだれも驚かないが、今回は菅も仙谷もそれに乗っかってしまった。ここが目新しいところだ。

 仙谷は方針が決まってから「地方の中小金融機関や地方経済に良い影響をもたらさない」と言った。

 が、総理一任を容認しておきながら、そんな台詞を吐いても後の祭りどころか、言い訳みたいなものである。

 菅は斎藤次郎元大蔵事務次官の日本郵政社長人事でも「聞いていなかった」と語り、亀井に抵抗するそぶりをみせた。ところが結局、押し切られている。今回も預け入れ限度額の2000万円への引き上げについて「聞いていない」とテレビの生番組で語りながら、このありさまである。

 こうなると、鳩山政権内の力関係がはっきり見えてきた。

政策でも一致する小沢と亀井

 亀井は小沢一郎民主党幹事長にも郵政改革法案を説明したと言っている。斎藤人事では、斎藤が小沢の盟友であるのは広く知られている。結局、亀井と小沢の間で話が決まり、あとは鳩山首相がなにを言おうが、まして菅や仙谷が抵抗しようが、平気の平左であるということだ。

 参院自民党から民主党と国民新党への鞍替えが続いたことで、いまや参院は民主党と国民新党の会派だけで過半数が占められている。事実上、社民党は政権内で存在意義を失い、国民新党がキャスティングボートを握った形なのだ。その結果、亀井の発言力が高まった。

 この政権は鳩山政権というより、実態は小沢・亀井政権になりつつある。

 2人はもともと自民党時代の古い政治体質を残している点で共通している。政策的にも、両者は財政による景気刺激重視タイプであり、親和性が高い。

 菅は「鳩山にもしものことがあれば、次は自分」と目算を立てているはずだ。そのとき小沢の力が大事になってくるから、いまは小沢との対決を避けているようにも見える。亀井が小沢と気脈を通じている限り、亀井の動きも無視できない。2度あることは3度ある。重要な局面で、また亀井にやられてしまうかもしれない。

 仙谷はどうするのか。亀井に「1周遅れ、2周遅れ」と言われて沈黙しているようでは「やはり仙谷も頼りにならない」と思われるのではないか。

 こうして政権の真の権力構造や目指す政策の方向性があきらかになってくるのは、基本的にいいことだ。たしかに目先の政策展開は時計の針が逆転しているように見える。だが、あいまいだった民主党の政策路線の地肌が露わになってきた点で時計の針は着実に進んでいる。政治家の地金や力量も見えてきた。

 国民は7月の参院選でしっかりと目を凝らして選択できるのである。

(文中敬称略)

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