2012年にシンガポール・香港に拠点を開設し、海外進出を果たしたユーザベース。そのシンガポール進出を、現地人材の獲得の面から支援したのがエンワールドだった。人材獲得合戦が繰り広げられるアジアの現場感、またそこで企業が優秀な人材を採用するために、企業はどう変わるべきか。エンワールド・シンガポール西野氏とユーザベース共同経営者の新野氏にシンガポールで語ってもらった。
前編はこちらからご覧ください。
—ユーザベースのように、アジアの現場に意思決定できる人がいる場合は、採用や経営のやり方をアジアにフィットさせやすいと思います。しかし、ほとんどの企業がそうではない。「決められる人」は遠く離れた日本にいるケースがほとんどです。
西野 はい。そうした企業の中には、「仕組み」でカバーしているケースもあります。いろんな企業の候補者のみなさんと話していると、「この会社に勤めている人は、比較的長く働いているな」と感じる企業が出てきます。
新野 興味深いですね。
西野 あるアメリカのクレジットカード会社なのですが、その会社に勤めている人のレジュメを見てみると、2〜3年経つと毎回新しいオポチュニティー(機会)を与えられているんです。例えば、シンガポール一国の担当から東南アジア地域を担当する役職へ異動になったり、営業職からビジネスディベロップメント職へ異動したりなど。
新野 「ここまであなたに期待します。それを満たしたときには、次はこういうことをお任せします」というコミュニケーションが密に図れているんでしょうね。
西野 そうでしょうね。ロイヤリティーを持ったスキルレベルの高い従業員が一定数いないと、会社は強くなっていきません。
—具体的にはどのようにコミュニケーションを図っているのでしょうか。
西野 その人の裁量を大きくすればモチベーションを上げてくれる、論理的には確かにそうでしょう。しかし、誰しもが夢を持って仕事をしているわけではありません。今の仕事にエキサイトしているかを把握して、本人がやりたいことを引き出してあげることも重要です。
—やりたいことを引き出すには?
西野 日本企業の人事部には一般的に、部長がいて課長がいて、というようにジェネラルなスキルを持った人が集まります。しかし、海外企業の人事部では、採用、スキル開発、コンペンセーション(報酬制度設計)など、異なる分野のプロフェッショナルが集まって組織を作っています。
新野 これは経営者の立場から感じることですが、たとえアジアの現場に自分では意思決定することができない担当者しかいなかったとしても、経営者を日本から連れてくればいい。何度も連れてきて、一緒に時間を過ごす。普段は日本にいる経営者も、そうやってアジアの現実を正しく知れば自然と変われると思います。
西野 私もよくお客様に日本から経営陣が来るので「現実について話をしてください」と呼ばれることがあります。日本企業もそうやって変わろうとしています。何かのきっかけでポンと背中を押されれば変われると思います。