ときど『東大卒プロゲーマー』【第3回】1日最低8時間はゲーム=仕事をしている

僕にとって、ゲームはフルタイムの仕事。「8時間ゲームをしている」を「8時間仕事をしている」といいかえさえすれば、「案外大したことないな」「誰でもやっているじゃないか」という印象をもたれることだろう。

大会前は別メニューになるが、普段の練習は、「トレーニングモード」と呼ばれる、連続技を練習したり、対戦の状況を再現、検証する環境での個人練習と、格ゲー仲間との「実戦」の2種類に分けられる。仲間との練習はオンラインでやることもあれば、練習所で集まってオフラインでやることもある。個人練習の時間に難易度の高い技術を身体にたたき込んでから、実戦の場で試す。その繰り返しである。

他の多くのことと同じく、ゲームでも、練習すればするほど技の精度は上がっていく。どんな局面でどんな技を繰り出すのが最善の手なのか、やるべきことを明らかにしたら、まずは反復練習だ。ボタンを押すタイミングが60分の1秒ズレれば失敗する連続技も、何百回、何千回と練習して、ミスなく繰り出せるよう極めていく。

反復練習をして、実戦で試し、対戦中に新たな発想が生まれ、それをまたトレーニングモードで検証する……俗にいうPDCAサイクルと同じである。

練習で楽に決められた技も、本番のプレッシャーのなかでは失敗することだってある。自分の技量が十分でも、対戦相手がプレッシャーをかけるのがうまいと、ミスを「起こさせられてしまう」わけだ。これを回避するためにも事前の準備が重要だ。「こういう状況に追い込まれる可能性がある」と予測し、シミュレーションを重ねておけば、本番でのプレッシャーも軽減する。

海外遠征先でも、大会での結果を反省しながらホテルの一室で練習をし始める。相部屋の選手が眠りにつく前からひとつの技を決めるための練習を始め、彼が朝目を覚ましてもまだ同じ練習をしていたので、驚かれたこともあった。しかし、それは頭を使わず、ただ手に覚え込ませるための単純な練習に過ぎない。時間をかけさえすれば、誰でも同じだけの効果を上げられるレベルの話である。反復練習だけでは、勝敗を決する要素にはなり得ない。

僕にとっては、戦略こそが、格闘ゲームの勝敗を分けるもの。プロゲーマーにとっての反復練習とは、よりレベルの高い練習をするための、いわば踏み台に過ぎないのである。スポーツ選手でいえば素振りとか、筋トレにあたるものなのだ。

【第4回】に続く

ときど
1985年沖縄県那覇市生まれ。プロゲーマー。本名・谷口一(たにぐち・はじめ)。麻布中学校・高等学校卒業後、東京大学教養学部理科Ⅰ類入学。東京大学工学部マテリアル工学科に進学、卒業。同大学院工学系研究科マテリアル工学専攻中退。2010年、日本で二人目となる格闘ゲームのプロデビュー。理論に裏付けされたセットプレイの構築を得意とし、複数のゲームタイトルで活躍する。年間に出場する国際大会は10を超え、海外大会での優勝回数は常にトップクラスを誇る。大会実績として、World Game Cup 2013優勝、EVO2013準優勝、Id Global Tournament 2014優勝など。TOPANGA所属。
 

 ときど著
東大卒のプロゲーマー-理論は結局、情熱にかなわない
PHP研究所/760円+税

道なき道を選び続ける若きプロフェッショナルが赤裸々に綴った、自省と開眼の書。論理の限界にぶつかった東大卒のIQプレイヤーが、何を考え、どう行動したのか。ゲームをとおしてたどりついた、新しい勝利の方程式。

amazonはこちらをご覧ください。

楽天ブックスはこちらをご覧ください。