品質改変世界---自主開発主義で市場を席巻する三一重工・梁穏根会長の思想とは?
文/モーニング編集部
NHK取材班のインタビューに答える梁穏根会長。戦後の日本企業の躍進に影響を受けたという。
昨年からスタートした島耕作×NHKのコラボ企画『島耕作のアジア立志伝』。躍進するアジア経済を牽引する気鋭の企業家を紹介するこの企画は、NHKの番組とモーニング誌面を横断する初めての試みとして人気を博し、2年目に突入した。今回、NHK取材班の話をもとに放送前の番組内容を紹介する。第一弾は、「大キリン」といわれる長いアームのコンクリートポンプ車で世界に名を馳せる中国企業「三一重工」を率いる梁穏根(りょうおんこん)会長。世界の建設機械市場を席巻する男の成功の秘訣に迫る!

"自前の技術"が生み出した「大キリン」

2011年3月、東日本大震災に伴う事故により制御不能となった福島第一原発。急速に高温化する原子炉を2ヵ月近くにわたって冷却し続け、最悪の事態を回避することにつながった建設機械があった。それは、日本ではほぼ無名の、とある中国企業から寄贈されたコンクリートポンプ車だった。

全長62mにもおよぶアームを持つことから「大キリン」と称されるこのポンプ車は、自慢の長いアームをするすると伸ばし、壊滅的な状況にあった原発建屋の真上から放水を続け、使用済み燃料貯蔵プールや原子炉の冷却に尽力したのだった。

「大キリン」を製造したのは梁穏根(りょう・おんこん)率いる「三一重工」。2012年1月にドイツの世界的コンクリートポンプメーカー「プツマイスター」を買収し、この分野で世界のトップに躍り出た、中国・長沙に本社を構える気鋭の建設機械メーカーだ。

三一重工が重視しているのが「自主開発主義」。社のモットーに掲げているのは「品質改変世界」(=品質は世界を変える)という言葉だ。梁がその言葉に込めた意味を語る。

「戦後、日本の多くの経営者が"品質改変世界"という考え方を持っていました。つまり、品質の高い製品でメイドインジャパンのブランドを築き、日本の復興を世界に知らしめようとしたのです。私たち中国の経営者もいま同じような歴史的立場にたっています。私たちも、かつての日本のように高い品質の商品を生み出し、世界の中国に対するイメージを変えたいのです」

福島第一原発を冷却し続けた通称「大キリン」は東京電力に無償で贈られた。 提供:東京電力

三一重工が重視する独自技術の象徴とも言えるのが、コンクリートポンプ車の長いアームだ。福島第一原発の冷却を可能にしたその技術は、年間売り上げの5%を占める研究開発費、一般事務職の社員より30%も高く設定された技術者の給与や手厚い報償に支えられている。

「技術者のような知識型人材は、規則で管理してもなかなかいい成果がでません。だから研究・開発スタッフには自由な環境を整備し、彼らのモチベーションを生み出すことが大切なのです」

その結果として誕生したのが、「SG鋼材」と呼ばれる特殊鋼だ。コンクリートポンプ車のアームは、むやみに長くできるものではない。アームが長くなればなるほど、コンクリートを送り出す際に発生する振動が増し、金属疲労でアームが折れてしまう危険性が高まるのだ。

この問題を克服するために、試行錯誤を経て開発に成功したのがSG鋼材だった。一般的な鋼材に比べて3倍の強度を持ち、かつ変形しにくい性質を併せ持つこの特殊鋼によって、圧倒的な長さのアームをもつコンクリートポンプ車が完成したのだ。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら