社長の風景

単なる技術経営の時代は終わりました。今は「モノづくり」に加えて「コトづくり」。さらには、社会にどう貢献するかの「ストーリー作り」が必要です。---不二製油 清水 洋史

2014年08月08日(金)
週刊現代
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隠れた名門だ。不二製油の得意分野は「食品用油脂の加工」。たとえば製菓用チョコは国内シェアトップ。アイスのコーティングに使うチョコにはアイスと同じ温度で溶ける工夫がなされるなど、社名(不二)の通り、ほかにない食品や中間素材(食品に加える素材)を製造・販売する。また、大豆の搾油から派生して生まれた大豆加工技術も世界有数で、カップうどんのお揚げ、大豆を分離した豆乳クリームなど、同社が世界で初めて開発した商品は枚挙にいとまがない。社長は、冗談が好きな清水洋史氏(61歳)だ。


しみず・ひろし/'53年、長野県生まれ、大阪府育ち。'77年に同志社大学法学部を卒業し、不二製油へ入社。新素材事業部長、経営企画部長、蛋白加工食品カンパニー長兼大阪支店長などを経て、'12年に専務に。'13年、営業出身として同社では初めての社長に就任。売上高2500億円超、社員4400人超のグループ会社を率いる ※不二製油のwebサイトはこちら

ガソリン

弊社は年間約6万tものチョコをつくっているほか、菓子パンに欠かせないマーガリンやホイップクリームも製造しています。変わったところでは冷凍のおとうふをつくるなど、私は日本人のほとんどが弊社の製品を口にしたことがあるのでは? と想像しています。しかし! その割に知名度が低い(苦笑)。先日、大学時代の担当教官にお会いしたら「最近、ガソリンはどうですか?」と聞かれ、私も「はあ」と言ったものの、会話がかみ合わない。聞けば、先生は私がガソリンスタンドに勤めていると思っていたようなのです。

孫の代

経営に欠かせないのは、歴史観・社会観です。たとえばこの業界で言えば、油脂やタンパクは人間の体に欠かせないから長い歴史がある、という歴史的前提を知ることが必要です。中でも弊社は1950年創業で、油脂業界では新参者だったから「サラダ油でなく、チョコに使う油脂など、人が手を付けてないことをやらなければ生き残れない」という信念が必要だった。

大豆事業は長く利益が出なかったのですが、経営が難しかった時期も「孫の代になれば(大豆事業を続ける意味が)少しわかるよ」と研究を継続してきました。そしていま、健康、味の両面で大豆が人気になり、豆乳鍋やソイラテ(豆乳のカフェラテ)が流行っている現状を思うと、先を見越していた当時のトップの判断には頭が下がります。

ちなみに先日、経営学の先生に話を聞いたら「松下幸之助の著作には200年後の話が出てきますよ」とおっしゃっていました。私は思わず「えええー!」と(笑)。

グラサン 学生時代に、松本城にて。「この格好で大学の講義に出たら先生にチョークを投げられた」。その先生とは、かの土井たか子女史だったとか

個と組織

学生時代はサッカー部のキャプテンで、大阪代表チームのフォワードも務めました。学校の上履き入れには、よく女子からの手紙が・・・・・・などという話はどうでもいいですが、最近、サッカーが私の経営観に影響を与えていると気付いたのです。

サッカーは、選手一人ひとりが上手くないと勝てませんが、みんなが上手いだけでも勝てません。「個」が組織の中でそれぞれの役割を果たし、組織の体制や上層部は、個を活性化するのが仕事。だから、現場の仕事が一番上手にできる人を上司にすればいいというものでもない。逆に、一番上手な人を上に持ってくると、その組織は先が見えてしまう。その人以上にはなりませんからね。

中国の青年

社長になる前、'06~'08年に、中国に赴任していました。めくるめくような楽しさと厳しさがありましたね。工場でつくった商品を勝手に持ち帰った工員に面談すると、悪いとわかってないのか「社長、この粉をコーヒーに入れるとおいしいんですよ!」と教えてくれたり(苦笑)。一方、優秀な人は優秀で、たとえば「事業にはスピードとタイミングが重要だ」と話したら、通訳が「スピード」を「速度」でなく「一気呵成」と書いた。タイミングは「臨機応変」。なるほどと私が感心しましたよ。

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