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二宮寿朗「日本人コーチの重要性」

 アルベルト・ザッケローニの後任監督に、メキシコ代表を率いてW杯16強に2度進出した経歴を誇るハビエル・アギーレの就任が決まった。今月11日に来日し、会見で“所信表明”する予定だ。
 アギーレはクラブチームでもオサスナ、アトレティコ・マドリード、昨季まではエスパニョールの指揮官を務めるなどリーガ・エスパニョーラで経験を積み、世界でも名の知れた監督だと言っていい。ビッグクラブを指揮した経験こそないものの、W杯の実績という点では過去のどの日本代表監督より勝っている。

検証すべきコーチングスタッフの構成

 アギーレ体制の陣容も見えてきた。外国人スタッフとしては、コーチにイングランド出身のスチュアート・ゲリング、フィジカルコーチにフアン・イリバレン・モラス(スペイン)、GKコーチにリカルド・ロペス・フェリペ(スペイン、五輪代表を兼任)の就任が既に発表されている。一部報道ではアギーレ氏の次男ミケルの“入閣”も有力だという。言うまでもなく、いずれもアギーレが希望した人材であり、監督を除いて4人の外国人がコーチングスタッフに入るのは前回のアルベルト・ザッケローニ体制と同じである。

 加えて日本人ではリオデジャネイロ五輪出場を目指すU-21代表監督の手倉森誠がコーチングスタッフに入る。五輪監督がスタッフ入りするのは従来どおりで、ザッケローニ体制のスタッフ構成とほぼ共通している。

 しかし、ブラジルW杯で結果が出なかった以上、コーチングスタッフの構成について見直す必要はなかったのか。筆者は参謀格の日本人コーチを五輪監督以外に、もう1人置くべきだと考えている。監督にJリーグの指揮経験などなければ、なおさらだ。

 前任のザッケローニは日本人を深く理解しようとした指揮官だった。選手との対話を重んじ、選手からの信頼も厚かった。チームの細かな変化も見逃すまいと、キャプテンの長谷部誠とは常にコミュニケーションを取ってきた。それでも本大会では100%の力を出せなかった。大会前は指揮官自身、チームを心身ともにベストに近い状態に持っていった自負があったにもかかわらずだ。

 大舞台のW杯に臨むにあたり、心身の微妙なコントロールが何か足りなかったのかもしれない。合宿が1カ月の長丁場になれば、メンタルの波も出てくる。また、フィジカルコンディションを上げていくなかで疲労を感じたとしても大舞台の前なら、隠そうとしてもおかしくない。外国人スタッフには分かりづらい小さなニュアンスを見落としていた可能性もあると思うのだ。

 ちょっと無理をしている、ちょっと我慢している。ザッケローニ監督が常にアンテナを張っているとしても、その「ちょっと」を見つけるのはなかなか難しいものだ。
 優勝した2011年のアジアカップではスタッフに関塚隆コーチがいた。自分の目から見た選手の状況を伝え、助言することも彼の役割だった。鹿島アントラーズでコーチとしてジョアン・カルロス、トニーニョ・セレーゾらブラジル人監督を補佐してきた経験もあり、今振り返ってみても関塚の仕事は極めて貴重なものだった。

 2002年日韓W杯のフィリップ・トルシエ監督体制では山本昌邦がコーチに入閣して、選手に細かく目を配っていた。トルシエの苛烈な指導に対して、山本コーチがいろいろとフォローしていたというのだ。トルシエジャパンの守備の要を担った故・松田直樹からも「昌邦さんの存在は大きかったよ」と聞いたことがある。フラストレーションを溜めていると、決まって声をかけてきてくれたそうである。