NewsPicks梅田優祐【第1回】「"ニュースに対して、誰がどんな反応をするか"に価値を置く世界観をつくる」

2014年08月05日(火) 佐々木 俊尚
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佐々木 議論が良いのか、良くないのか、というのはどういう考え方に基づくものなのですか?

梅田 はい、そこは社内でも非常に意見が分かれました。当然、議論できたほうが面白いんじゃないかという意見もありました。ただ、それよりも世界観をつくっていくことを優先しました。つまり、炎上することで、場を崩してしまわないこと。人ではなく記事に対してしか向き合わないという世界観をつくっていくことの方が重要だという結論になりました。

ただ、今後プレミアム会員向けに、専門家だったり著名なPicker(ユーザー)の人に直接連絡をとって質問できたり、そういう仕組み当然考えてもいいなとは思っているんですけど、まずは向き合うものは記事に対してだけである、という世界観をつくっていこう、と。それは、今のところうまくいっているんじゃないかなと思っています。

実名性で、「どんな人がコメントしているのか」に重きを置く

佐々木はてなブックマークも当初は一度しかコメントできなくて、記事に対してコメントできないという意味では割と同じ設計でした。でも、その割にはてなブックマークってメディア空間としてかなり殺伐とした文化を形成してしまったということがあると思います。はてなブックマークとNewsPicksはどこが違うんでしょうか。

梅田 はてブさんと大きく違うのは実名性というところと、有用なコメントをする人には「いいね!」がついて、そういうユーザーはランキングで評価されるような形をとっているところですね。よく人気ユーザー1位にランクインされるのはは堀江貴文さん、乙武洋匡さん、竹中平蔵さん、その他投資銀行家、経営学者、国際機関で働いていらっしゃるアナリストの方々ですね。

佐々木 やはり、社会というのは環境管理的にアーキテクチャを構築しないと、どうしても悪いものも良いものも混在してしまうという問題があるわけです。そこをユーザーが「コントロールされている感」を感じないようにしてどうやってうまく設計していくかということが大事ですよね。

梅田 おっしゃる通りです。やはりコミュニティというのは、先に中にいる人を見て「こういうコミュニティなんだな」と理解するものなので、最初の方々が非常に重要ですね。我々は社内にアナリストがいるので、どんどん専門的なコメントを書いていって世界観をつくっていきました。さらに、外部のアナリストの方、たとえばクレディスイスの山手さんという非常に人気のあるユーザーがいらっしゃいますが、そういう方々にお願いしたり、株主の方々に協力していただいたりしてきました。

でもやはり、いちばん大きいのは実名かどうかだと思います。実名というのは発言に責任を持つことだと思うので、我々は実名かつ、会社名や役職も入れることを推奨しています。「一橋大学教授」とか「世界銀行コンサルタント」のように、多くの人は入力して頂いています。それが当たり前だ、という世界観をつくったことは大きいんじゃないかと思います。

佐々木 そういうことなんでしょうね。インターネット初期のころの日本は、一般社会では言いたいことが言えないような圧力がたくさんあったんですよね。そこではできないようなピュアな議論ができるのではないかという期待感も高かったから、匿名擁護論がすごく多かった。

日本の息苦しいムラ社会で、そのムラを背負ってしまうと何も発言できなくなるというのがあって、匿名の自由の空間が求められたということだと思うんです。

ですが、その匿名の流れでここまで来て、結果的に荒れまくってしまった、というのがこの10年の強烈な反省ではあるわけです。だから、実名のほうが荒れないというのはおっしゃる通りだと思います。

梅田 原体験から来ているサービスなので、自分にとって重要なニュースというのは一体何なんだろうと考えたときに、私の尊敬する先輩や上司が「重要なニュースだから読んでおけよ」と言った瞬間、重要なニュースになるんですよね。誰が言ったか、ということは非常に重要だなあと。ですから、できるかぎり実名性で、「誰がコメントしているのか」に重きを置いています。良いコメントをされているユーザーさんで会社名や役職名が入っていない方には、こちらからわざわざ「入力していただけないでしょうか」と連絡していました。こうして地道に「世界観づくり」をしてきました。

【第2回】に続く

(編集協力/田中裕子)

梅田優祐(うめだ・ゆうすけ)
UZABASE代表取締役共同経営者
コーポレイトディレクションにて製造業、商社を中心とした全社成長戦略、再生戦略の立案・実行支援、食品メーカー等のBPRを中心に従事。その後、UBS証券投資銀行本部にて、事業会社の財務戦略の立案、資金調達支援、自己勘定投資に従事。2008年、UZABASEを設立。
佐々木俊尚(ささき・としなお)
作家・ジャーナリスト。1961年兵庫県生まれ。早稲田大学政経学部政治学科中退。毎日新聞社などを経て、フリージャーナリストとしてIT、メディア分野を中心に執筆している。
 
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