いまや1100万人の旅行者が利用するエアビーエンビーが示す信頼の進化
「Airbnb」のwebサイトより

私はエアビーエンビーは絶対にうまくいかないだろうと考えていたひとりだった。ほとんど知らない人に、自宅のスペースを貸す人間なんていないだろうと思っていた。しかし、それは明らかに間違いだった。エアビーエンビー社が発表したデータによると、これまでに1100万人の旅行者がエアビーエンビーの滞在先に宿泊しており、現在、ホストが旅行者に提供している自宅の数は55万件にのぼる。エアビーエンビーはアメリカよりもヨーロッパで人気があり、利用都市ではパリが最大である。

エアビーエンビーは、PtoP(ピアトゥピア=peer to peer)経済の一端にすぎない。人々は、赤の他人に自分の車や電気工具を貸したり、ペットを預けたりしている。

PtoP経済が育った背景

振り返れば私は、PtoP経済を可能にするような、いくつかのトレンドの潜在力を見くびっていた。第一に、私は、中産階級の停滞による影響を過小評価していた。給料は上がらず、家庭が圧迫されれば、多くの人が過ぎし日のボーディングハウス(=賄い付きの下宿屋)モデルに戻らざるを得ない。住宅ローンや家賃を支払うために、部屋を貸さなければならないのだ。

第二に、文科系を専攻した人たちが経済におよぼす力を軽んじていた。何百万もの人々が、旅先では現地の生活に触れてみたいという思いをもって大学を卒業したが、彼らはあまりお金を持っていないのだ。そういった人々は、商業地域にある個性のないホテルに宿泊するよりも、住宅街の空き部屋に泊まりたがる。とくに、ホストの人々と一緒に朝食がとれるとなれば、なおのことだ。

そして、私が充分な認識に至っていなかった最大の点は、社会的信頼の変革である。原始的経済の社会では、人々は、ほとんどの場合、自分の村やコミュニティの中で取引をしていた。そこでの信頼は対面によるものだ。その後、私たちになじみのある大衆経済になってからは、政府の規制によって行動の信頼度が高まり、安定した大企業のブランドを購入するようになった。

しかし現代は、社会的、経済的双方の力に基づく新しい信頼の測定方法がある。社会的には、主に大学卒業後の10年間、そして退職後の10年間に、組織化されていない生活を送っている膨大な数の人々がいる。

これらの人々は、大学や企業、または安定した家庭といった、外部の大きく組織化された構造から外れたところで、単独で、または短い期間にルームメイトと暮らしている場合が多い。彼らは非常に早く、また社会的なつながりを流動的に作るようになった。そのため、即座に親しくなるか、少なくとも瞬時に生まれるうわべだけの親しさに慣れているのだ。人間的な触れ合いに飢えていると同時に、即座に生まれは消えていくような定まらない人間関係を受け入れることができる。

経済的な面では、フリーランスで働く人の数が以前よりもずいぶん増えたことだ。彼らはお金の稼ぎ方に関しては、個人主義を貫いており、多くの場合はオフィスに出勤しない。大きな組織的システムの代わりに、直接、話や取り決めの交渉ができる者に依存することを選んだ人たちである。フレキシブルに動き、その場に応じて物事を取り決めていくことに慣れている。

その結果、あえて大きな組織を信頼しない人間指向型の文化が生まれた。大組織と比べれば見ず知らずの人はとくに危険ではない。これがPtoP取引が育つ豊かな土壌となった。

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