メディア・マスコミ
マレーシア航空機撃墜事件の報道から考える海外特派員の意味
7月24日付の毎日朝刊1面

転電形式の記事なら東京にいても書ける

マレーシア航空機が撃墜された7月17日以降、ウクライナ情勢を伝える特派員電が全国紙に連日大きく載った。事実を淡々と伝えるストレートニュースなのに、同じ記事に何人もの特派員が署名しているケースもある。

たとえば7月24日付の毎日新聞朝刊。前日に犠牲者の遺体がウクライナからオランダへ移されたことを受け、1面に「撃墜機残骸に切断跡 ウクライナ政府『証拠隠滅』と批判」という記事を掲載。書き出しはこうだ。

〈 【ハリコフ(ウクライナ北東部)真野森作、キエフ坂口裕彦、アイントホーフェン(オランダ南部)宮川裕章】 〉

発信地と署名だけで紙面上で5行を占める。ハリコフ、キエフ、アイントホーフェンの3都市に3記者を派遣したのだから、それなりの長文記事になっているのか? 違う。長さはざっと800字であり、400字詰め原稿用紙2枚ほどしかない。

記事には「7面に関連記事」と書いてあった。「ひょっとしてハリコフ発かアイントホーフェン発のルポでもあるのか?」と思いながら同面を開いてみた。すると、そこにはワシントン発の記事「マレーシア機撃墜 情報戦仕掛ける米」が大きく掲載されていた。

過去の記事を調べると、3記者とも欧州駐在の特派員である。ハリコフの真野記者はモスクワ支局、キエフの坂口記者はウィーン支局、アイントホーフェンの宮川記者はパリ支局所属。ウクライナ情勢の緊迫化を受けて急きょ現地に派遣させられたのだろう。

相当なコストをかけて3人の特派員が現地入りしたわけだが、その3人が書いた1面記事は「英BBCなどが伝えた」と転電形式になっている。転電とは、「地元メディアによると~」などと他メディアの報道を引用する記事のこと。このような記事は、東京にいながらでも書くことができる。

実際、この記事を見ると、APやロイター、共同通信など通信社の配信記事を利用すれば書けるような内容で構成されている。三つ例を挙げてみよう。

〈 同国の国家安全保障・国防会議は「ロシア領から発射されたミサイルに撃墜されたとの情報がある」と発表した。 〉

〈 ウクライナ政府によると、親露派側からマレーシアの調査団に引き渡されたブラックボックスは23日、英国に到着した。 〉

〈 死亡したオランダ人は193人おり、政府は23日を服喪日とした。 〉

以上はいずれも政府発表情報であり、記者が現地にいなくても入手できる。ウクライナの首都キエフで同国政府が航空機撃墜について何か発表すれば、それは通信社などを通じて瞬時に世界を駆け巡る。記者が現地で同国政府から発表資料を手渡して受け取らなくてもいいのだ。

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