川口マーン惠美「シュトゥットガルト通信」

オペラ『オルフェオとエウリディーチェ』を聴いて、古事記の世界に思いを馳せる

2014年08月01日(金) 川口マーン惠美
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エウリディーチェは死の国を気に入っていた!?

シュトゥットガルト歌劇場で、グルックの『オルフェオとエウリディーチェ』を聴いた。バレエとの斬新な組み合わせの演出がおもしろいオペラだ。初演は1762年。題材はギリシャ神話で、黄泉の国のお話だ。ただ、神話とオペラの筋書きは、だいぶ異なる。

神話では、オルフェオの最愛の妻・エウリディーチェが、結婚式の日、毒蛇にかまれて死んでしまう。絶望したオルフェオは、妻を取り戻そうと黄泉の国へ行く。さまざまな難関を、竪琴の演奏や歌で切り抜けて進むうち、黄泉の国の王様・ハデスも心を動かされ、エウリディーチェを返してくれることになった。ただし、条件があり、地上に帰りつくまで、妻を見てはいけないという。ところが、オルフェオは不安になって振り向き、妻は消えてしまうというお話だ。

ギリシャ神話は、時と場所を変えて後の話に繋がっていくので、オルフェオもその後、波乱万丈の人生を送るが、最終的にディオニュソスの怒りに触れてしまう。

ディオニュソスというのはワインの神様で、大勢の女性を集めては、酒の力を借りて狂乱と乱痴気騒ぎを行った新興宗教のグルのような人物。オルフェオは、ディオニュソスの取り巻きの女たちに八つ裂きにされ、川に投げ捨てられるという気の毒な結末だ。そのあとは、オルフェオの首が歌を唄いながら川を下り、海に出て、レスボス島まで流れ着く・・・と、ちょっと訳が分からないところが、ギリシャ神話の醍醐味。

一方、オペラのほうでは、妻・エウリディーチェは、夫が迎えに来てくれたことを喜ぶが、そのうち、夫が自分を見ないことを不審に思い、愛情が冷めたのではないかと疑う。そして、嘆きに嘆いた挙句、いっしょに行くことをためらい始めるため、可哀そうなオルフェオはこたえ切れず、ついに振り向く。するとエウリディーチェが、今度は黄泉の国で本当に死んでしまう。

そこまではギリシャ神話と似ているが、オペラではこのあと、絶望して自殺しようとしたオルフェオを愛の神・エロスが気の毒に思い、助けてくれる。エウリディーチェは生き返り、最後は、皆で神に感謝し、めでたしめでたし。つまり、ハッピーエンドとなる。

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