オムツ、肉まん、野球の采配---世の中はこんなにも統計学で溢れている!
~「数理統計学」について学ぶ~
出口調査の仕組み。サンプルデータそのものに、偏りがないことが大事だ
統計学者
鳥越規央先生

1969年、大分県生まれ。筑波大学を卒業後、筑波大学大学院数学研究科を修了。理学博士。著書に『9回裏無死1塁でバントはするな』(祥伝社)など。スポーツを統計学から分析する専門家

数理統計学とは?

松尾貴史(以下、松尾) 本日のゲスト、鳥越規央先生の専門分野は統計学だそうです。勝手な印象ですが、統計と聞くとコツコツと地道な作業を要求されるイメージがあるのですが、実際のところはどうなのでしょう?

鳥越規央(以下、鳥越) おっしゃるとおり、派手な分野ではありません(笑)。でも、僕は統計的なデータを見て、地道に分析していくことにむしろハマってしまいまして・・・。思えば、高校時代から統計データの分析が好きでした。

松尾 根っからの統計好きですね(笑)。先生は、「数理統計学」という分野を研究されているそうですね。

鳥越 ええ。統計学とはデータを収集して集計する学問ですが、なかでも私が研究している「数理統計学」は収集したバラつきのあるデータの裏に隠された規則性や性質を、数理科学的に探るというものです。

松尾 簡単にいえば、データから物の傾向を見る学問ということですよね。

鳥越 ええ、そうです。

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松尾 以前からとても気になっていたのですが、国政選挙のテレビ番組で、投票日当日の開票をする20時の時点で、もう当選確実の速報が出ていることがありますよね。あれは統計学の観点から算出したデータをもとに、速報を出しているのでしょうか?

鳥越 そのとおりです。それまで記者が取材してきた蓄積に加え、出口調査、つまり投票を終えた人に「あなたは誰に投票しましたか?」と質問して、集計したデータをもとにしているのです。もちろん、投票したすべての人に聞いたわけではなく、有権者の一部を少しだけすくって、それが投票行動の縮図になるように調査をしています。人数にして、だいたい3000人ぐらいでしょうか。

松尾 「あそこの局、当確が早いな。大丈夫かな~」と思っても、ほとんど間違うことがないですよね。

鳥越 そうなんです。多くの有権者がいるのに、たった3000人でなぜ正確なことがわかるのか。それは、統計学をスープや味噌汁の味見にたとえるとわかりやすいです。スープを味見したいとき、たいていの人はよくかき混ぜて、スプーン1杯分をすくって飲むのではないでしょうか。それで十分、全体がどういう味かがわかる。それと同じことです。

松尾 テレビの視聴率を調べる機関の方も、同じことをいっていました(笑)。でも、少ないサンプルがあまり混ざっていなくて、底の沈殿物部分を味見して「味が濃い」と思ってしまうことはないのでしょうか。

鳥越 そこなんです。統計学においては、よくかき混ぜることがまさにミソ。そうしないと、間違った結果を招いてしまう可能性もあるのです。

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