イスラエルとパレスチナが引き裂かれたはじまりはハマスという勢力からだった
佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」Vol041 文化放送「くにまるジャパン」発言録より
本コーナーは、佐藤優さんが毎月第一・第三・第五金曜日に出演している文化放送「くにまるジャパン」での発言を紹介します。今回は7月18日放送分をお届けします。なお、ラジオでの発言を文字にするにあたり、読みやすいように修正を加えている部分もあります。野村邦丸(のむら・くにまる)氏は番組パーソナリティ、伊藤佳子(いとう・よしこ)氏は金曜日担当のパートナーです。
〔PHOTO〕gettyimages

深読みジャパン

伊藤: 共同通信によりますと、イスラエルのネタニヤフ首相は(7月)17日、イスラエル軍に対し、イスラム原理主義組織ハマスが支配するパレスチナ自治区ガザに対する地上作戦を命令しました。

これはイスラエル首相府が発表したもので、一般市民を含む多数の死傷者が出る恐れがあります。イスラエル軍がガザからのロケット弾攻撃を阻止するため、今月8日に始めた軍事作戦は新たな段階に入り、ガザ情勢は緊迫した局面を迎えました。

こうしたなか、イスラエル軍の報道官は「地上作戦を始めた」と発表しましたが、ガザ側ではイスラエル軍による砲撃は強まっているものの、地上進攻は始まっていないとの情報もあります。

邦丸: まず基本から佐藤さんに伺いたいんですが、イスラエルという国の位置は、地中海の東側ですね。

佐藤: はい。アラビア半島の西側ですね。

邦丸: それでイスラエルという国のなかに、パレスチナ自治区というのが2つあるんですね。

佐藤: はい。地中海に面したガザ地区と内陸部の西岸地区(ヨルダン川西岸地区)です。

邦丸: そのうちのガザ地区に今、イスラエルが地上戦をしかけているということです。そもそもこのパレスチナ自治区というものがなぜあるのか。

佐藤: そもそもパレスチナにはイスラエル人とパレスチナ人の双方がいるから、国連は最初、パレスチナとイスラエルの両方の国家をつくろうとしたんですよ。しかし、パレスチナ側がパレスチナを一国にしろ、イスラエルは要らないと、これを拒否したんです。それで第一次中東戦争が起きまして、パレスチナ側が負けてしまいました。

こうして国家はイスラエルだけということになったんです。その後、何度かの交渉を踏まえて、今のような形での自治区が2つできたんです。

邦丸: ガザ地区のほうは、その面積は東京23区の面積の6割ぐらいだそうですね。東京の葛飾区辺りから横浜の戸塚辺りまでの広さです。そこに約260万人が住んでいるということなんです。

第一次中東戦争が起きたのは、イスラエルのユダヤの人たちに対してもともとここは自分たちの土地だということで、パレスチナの人たちが新たに建国しようとしたからですね。

佐藤: それはもう19世紀の終わりから続いています。

邦丸: そして中東戦争は第一次、第二次、第三次とあって、結局、イスラエルという国家のなかに、もともとそのエリアに住んでいたパレスチナ人たちの自治区ができているわけですね。

佐藤: はい。それが2ヵ所あるということです。

邦丸: そのうちのガザ地区に、停戦が明けた後にイスラエルが地上進攻しているということなんですけど、なんでいつまでもこういうことが続くのか。

佐藤: 私は昔、ガザ地区に行ってアラファトと会ったことがあるんですよ。

邦丸: PLO(パレスチナ解放機構)の!

佐藤: はい、PLOの議長だった人です。当時はイスラエルの人に案内してもらって会いに行きました。

邦丸: ということは、自由に行き来していたということですか。

佐藤: はい。お互いの国家として認めようという、蜜月の時期があったんです。それが壊れてこんな状態になっちゃったんですが、重要なのは、ハマスという勢力があるんです。

邦丸: ハマス。これもよく聞きますね。

佐藤: それから、ファタハ。これはPLOの軍事部門で、アラファトさんがいたところです。ここは、比較的穏健なんです。もっとも、最後の時期になるとアラファトさんもだいぶ激しくなりましたけれど。ハマスというのは、自爆テロを発明した団体です。

邦丸: 今、中東各国で自爆テロが起きていますが。

佐藤: それらはハマスからスタートしているんです。

神様はひとり。だから、世界はアッラーの神によって支配されるただ一つの帝国でなければいけない。それをカリフ帝国というんですが、帝国を治める人は一人、カリフだけ。これを実現させるためにイスラーム革命をやる。その第一歩が、ユダヤ人を全滅させる、あるいはパレスチナからつまみ出すこと。イスラエルは最後の欧米国家の植民地だ――ハマスはこういう考えなんですね。

ですから、イスラエル自体をなくしてしまうということが目的の組織なんですよ。普通の政府ではないんです。基本的に、ISIS(イラクとシリアのイスラーム国)やアフガニスタンのタリバーンと一緒なんです。

邦丸: イスラエルのガザ地区にいるのは、ほとんどハマスだというのは本当なんですか。

佐藤: いや、住民の大多数は、必ずしもハマスを支持しているわけではないんですよね。ただ、ファタハのほうがすごく腐敗しているんです。支援物資をもらっても上層部のほうで撥ねちゃって、国民に貧富の差がものすごく広がっている。

イスラーム原理主義のなかには、過激な政治運動をする人たちもいますけれど、神様の前ではわれわれは平等だということで、指導者たちの生活はものすごく質素で、持っているものは国民に分け与える、福祉を重視する人たちがたくさんいます。だから、人々の心をつかむことができるんです。・・・(以下略)

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」vol041(2014年7月23日配信)より
 

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