佐藤優の読書ノート---日本人が自覚していない「日本ナショナリズム」の姿を提示した本、樋口直人著『日本型排外主義』ほか
佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」Vol041 読書ノートより

読書ノート No.125

◆樋口直人『日本型排外主義――在特会・外国人参政権・東アジア地政学』名古屋大学出版会、2014年2月

日本型排外主義』著:樋口直人
税抜価格:4200円 ⇒Amaoznはこちら

日本における排外主義的な右翼運動に関する社会学の立場からの本格的な研究書である。日本人が自覚していない「日本ナショナリズム」の姿を提示することに成功している。

<経験的研究の結果をみると、本章で検討した四つの仮説(引用者註*「近代化の敗者」論、競合論、抗議政党論、合理的選択論)を完全に棄却したものはほとんどない(Goodwin 2011)。その意味で、どれも現実の一側面を反映しているといえるが、どの仮説がどれだけの説明力を持つかが問題となる。そもそも、政治的亀裂の弱体化によって属性の説明力は落ちている。そうした趨勢のもとで、極右政党と緑の党はそれぞれ下層と上層の支持が比較的多いという点で、新たな政治的亀裂の反映という見方もある(Knutsen 2006)。

だが、「近代化の敗者」が支持するがゆえに極右政党が台頭した、というほど属性の説明力は強くない。そもそも極右政党と属性の関連は、他の政党と大きく変わるものではない。極右政党が支持を伸ばしたのは、「近代化の敗者」という特定の支持基盤にアピールしたからではなく、属性を越えて広がる反移民感情を票に変換したからである(Eatwell and Goodwin 2010; Merkl 2004)。その意味で、極右政党は既成政党よりも「政策」で勝負する「近代的」な政党であるという皮肉な見方も成り立つ(Van der Brug and Fennema 2003: 66)。

競合論についても、少なくとも経済的競合の側面にかんしては合理的な判断の上で極右を支持している状況が浮かび上がった。移民流入と経済的競合を同一視するのではなく、自らの状況と利害を考慮したうえで移民排斥を訴える政党を選ぶのである。その中で非合理的な側面が垣間みえるのは、ムスリム移民に対する敵意が示すような文化的競合がもたらす極右支持であった。>(46~47頁)

日本における排外主義運動に対する認識は、「近代化の敗者」論を前提にしているが、この前提が根拠薄弱であることがわかる。・・・(以下略)

このテーマについて深く知るための「連読」3冊
・安田浩一『ネットと愛国――在特会の「闇」を追いかけて』講談社、2012年
・アーネスト・ゲルナー(加藤節監訳)『民族とナショナリズム』岩波書店、2000年
・魚住昭『野中広務――差別と権力』講談社文庫、2006年
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