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邪魔者には消えてもらう 財務省が指令「村木厚子を厚労省からいびり出せ!」

ジャーナリスト 長谷川学

送り込まれた「刺客」

政府が7月4日に決定した中央省庁幹部人事が注目を集めている。

これは中央省庁の幹部人事を一元管理する「内閣人事局」発足後、初の本格人事で、審議官級以上の約600人が対象だ。

菅義偉官房長官が幹部候補者の名簿を作成し、任命権を持つ閣僚が首相や官房長官と協議して決めることで、官邸主導の強化を図ったものだが、人事を中心的にまとめたのは元大蔵(当時)官僚の加藤勝信内閣官房副長官である。

加藤氏は安倍首相が全幅の信頼を置く側近中の側近で、首相の強い推しで初代の内閣人事局長に就いた。4日の人事では村木厚子厚生労働省事務次官(59歳)の留任、各省庁での女性局長誕生など、「女性の活用」がマスコミの関心を集めたが、本当の主役は別にいた。

財務省から省庁間交流で厚労省に送り込まれた谷内繁・理財局総務課長(51歳)である。

谷内氏は'86年入省。東大法学部卒で主税局主税企画官、財務省理財局の財政投融資総括課長などを歴任し、今回、財務省総務課長から厚労省大臣官房審議官への異動が決まった。

谷内氏のケースは過去の省庁間交流と事情がまるで違う。「ノーリターンルール」が初めて適用されたため、谷内氏は財務省に戻ることなく厚労省でキャリアを終えることが決まっているのだ。

「総務課長は局長就任目前のエリートのためのポスト。財務省に残れば最低でも局長になれる。そんな大物がノーリターンルールで他省庁に異動するのは異例中の異例。安倍首相と財務省出身の加藤官房副長官らが厚労省内での出世を後押しすると約束したのだろう」(官邸関係者)

その一方で窮地に立たされているのが、村木事務次官だ。

厚労省では、今年に入り不祥事が続発している。職業訓練事業に関する不適切な入札が発覚して局長らが処分を受けた。5月には、同省が用意した文書に別の法案の内容が紛れ込んでいたため、参院本会議が中断、散会する前代未聞の大失態を演じた。村木次官は国会に参考人として呼ばれ、陳謝するはめになった。

「村木次官は国会で進退を聞かれ『地位が大事とは思っていない』と発言。辞任を覚悟していたようだ。官邸内でも『村木さんにはマネジメント能力がない』という批判が相次ぎ、更迭も検討されたが、村木次官を切ると、安倍首相の女性抜擢人事が失敗したことになるので結局、首にできなかった」(官邸スタッフ)

障害者福祉がライフワークという村木氏が一躍、時の人になったのは'09年。厚労省を舞台にした「凛の会事件」で大阪地検特捜部が村木氏を虚偽公文書作成などの容疑で逮捕したが判決は無罪、「冤罪のヒロイン」になった。

「それに目をつけた安倍首相が厚労省内で次官が本命視されていた大谷泰夫総括審議官を外し、内閣審議官だった村木氏を次官に据えた。次官を打診された村木氏は『正直ひるんだ』と話していたが、やはり実力不足だった」(官邸筋)

事務次官の村木氏がピンチに陥ったタイミングを見計らったように、財務省エリートの谷内氏が厚労省に送り込まれたのはなぜか。

実は、厚労省の不祥事続発に乗じて、財務省が「村木厚子いびり出し」と厚労省制圧を狙っているのだ。

人事を一手に引き受ける加藤官房副長官は香川俊介財務次官、田中一穂主計局長、木下康司前財務次官と同じ〝花の'79年入省組〟。

「不祥事続発の厚労省を『たるんでいる』と真っ先に批判したのは麻生太郎財務相だった。さらに加藤氏が村木事務次官らを厳しく注意したらしい。そうやって厚労省に圧力をかけて反対を封じこんだ上で谷内氏を送り込んだ」(財務省関係者)

官邸の加藤氏、財務官僚の香川氏らの思惑は一致している。

「厚労省が所管する『年金積立金管理運用独立行政法人』(GPIF)を改革し、GPIFが持つ世界最大の年金基金(約130兆円)の株式運用を大幅に増やすことです」(前出の財務省関係者)

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