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3億円を横領して、キャバクラ大豪遊「三菱のヤマさん(三菱製鋼元エリート社員)」今夜もご来店!

「オレ、三菱の部長で月に400万円もらってるんだ」「ほら、オレって昔、ボクシングやってたからさ」——ぜーんぶウソだった

斜め掛けのポシェットに古びた革靴を履き、ボロい財布からゴールドカードを取り出す。どう見ても冴えない男がネオン街でその名を轟かせた。酒と女に溺れた元エリート社員、転落人生の一部始終。

身なりは地味な会社員

「ヤマさんは多いときは週4回、ほぼ毎日、この店に来てたよ。『僕は三菱の部長だから、月に400万円もらっているんだよ』って。仲良くなった女の子には、ブランド品とか家電一式とか、とにかくなんでも買ってあげてた。そんなお客さん、めったにいないじゃん?だから目立つわけ」

東京都足立区、北千住駅西口。再開発され、マルイとルミネが建ち並ぶ駅前から幹線道路を一つ越えると、大衆居酒屋やキャバクラ、ピンサロが軒を連ねる古くからの飲み屋街がある。

この街で名門・三菱グループのカネが闇に消えた。その額、実に3億円—。会社のカネを使い込んだ三菱製鋼子会社の元総務担当部長・山本英成容疑者(45歳)が、6月25日、詐欺容疑で警視庁捜査2課に逮捕された。

冒頭のコメントは、山本容疑者が入り浸ったキャバクラの一つに勤めていたキャバクラ嬢のものだ。山本容疑者は北千住界隈で「ヤマさん」と呼ばれ、そのカネ払いの良さから上客として通っていた。

キャバクラ嬢が続ける。

「ヤマさんが現れたのは、3年前の秋頃だったかな。背が低くて、体が小さくて、話下手で、こういった店に慣れている感じはしなかった。でも、とにかくおカネは持っていたよね」

かつて、山本容疑者は将来を有望視されるエリート社員だったという。三菱製鋼の関係者が言う。

「一時期は仕事ぶりも会社から評価されていて、課長職までは順調に出世していたんです。ところが'05年にメンタルをやられて病院通いになり、出社拒否になってしまった。それで結局、本社に置いておけなくなり、'06年7月に子会社の『菱鋼サービス』へ出向になりました」

そこで任されたのが、三菱製鋼の役職者が持つことを許された、法人用クレジットカードを管理する業務だった。山本容疑者は、その業務に携わる過程で「裏ガネ」を作りだす悪知恵を思いつく。

それは、本来は解約して廃棄すべき退職者のカードを解約せず手元に残し、自分で使うという手口だった。カード会社から送られてくる明細書はシュレッダーにかけ、不正に利用した金額は、別のカード名義人が海外出張などで使用したかのように伝票を改竄し、上司の決裁を仰いでいた。

この単純な手口を、会社は長らく見抜くことができなかった。山本容疑者が横領を行った期間は'07年2月頃から'12年11月までの5年10ヵ月に及ぶ。

「まさか3億円も横領しているとは、会社はまるで気づいていませんでした。高級スーツや高価な腕時計を身につけているわけでもなく、ごくごく地味なタイプ。普通の身なりの社員でした。発覚したのは、カードの明細書をシュレッダーにかけていた彼の不審な動きを、上司が偶然発見したからです」(前出の関係者)

同社の調査によると、3億円のうち、判明しただけでも9300万円が女性へのプレゼント代に、3200万円がキャバクラ代に、そして1800万円が飲食費に消えていた。

貢ぎ物の見返りは……

冒頭とは別の、「ヤマさん」に指名を受けていたキャバクラ嬢が証言する。

「銀座のエルメスとかカルティエとかで何でも買ってくれたよ。『僕が指名する女の子にはいい服を着てもらいたいし、きちんと化粧して、いい物を食べてもらいたい』って。でも私は銀座まで行くのが面倒くさかったから、もっぱら北千住のマルイで買ってもらっていたの。あるとき、『100万円あるから、好きなもの買いなよ』と言うので、断る理由もないから、同僚と二人でマルイの最上階から好きなものを買っていった。40インチのテレビとか、洋服とか、高級化粧品。でも庶民に一人50万円は使いきれなかった(笑)」

山本容疑者は湯水のごとく、キャバ嬢に貢いだ。だが、その見返りとして彼が手にしたものは、あまりに少ない。キャバ嬢が続ける。

「普通、キャバクラ遊びをする人って、セックスだったり、恋人探しだったり、何か下心があるじゃん?でもヤマさんは、そっちのほうは本当に控えめだった。タクシーで送ってもらったときに『部屋に上がりたいなぁ』って横でボソッとつぶやくんだけど、無視したらそのまま黙って帰ってしまう。紳士というよりはチキン(笑)?ヤマさんが昔、ある元キャバ嬢と『結婚を前提に付き合うことになった』と吹聴したこともあるんだけど、その女の子に確認したら、ウソだとすぐにバレた。ヤマさんがキャバ嬢とセックスしたって話は、他のコからも聞いたことがないよね」

山本容疑者が行きつけだったという居酒屋の店主が憐れむように言う。

「ヤマさんは本当に気が小さくて、寂しがり屋で、自分に自信がないんだよ。他人から馬鹿にされるのが怖くて、だからいつも虚勢を張って、実際以上に自分を大きく見せるためにがんばっていた。歩き方だってポケットに手を入れたまま大股でふんぞり返って、肩で風を切るようにしてね。それも『ヤマウォーク』なんて馬鹿にされていたしね。

あとは『オレ、昔ボクシングやってたからさ』って言って、シュッシュッって拳を振る動作をしたり。それがいかにも子供っぽくってウソ臭い。他のお客さんに『本当にやってたの?』ってからかわれると『やってた、絶対やってた』って真っ赤になって怒って……」

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