メディア・マスコミ
神戸新聞の「号泣県議」スクープと地域報道の役割を黙殺した主要メディア
野々村議員の釈明会見を動画付きで報じた神戸新聞ウェブ版(神戸新聞NEXTより)

地方発の世界的「エンタープライズスクープ」

兵庫県の「号泣県議」が全国的な注目を集めている。政務活動費で不透明な支出を指摘され、記者会見で号泣した野々村竜太郎県議(7月11日付で辞職)のことだ。

そもそも野々村氏の不透明支出問題が明らかになった発端は何だったのか。私は当コラム執筆のために国内紙だけで5紙を購読しているが、どの新聞を読んでも「~ということが分かった」「~ということが明らかになった」などとしか書かれておらず、雲をつかむような思いだった。

ネットで調べると神戸新聞のスクープであるらしかった。確かに、他紙が何も報じていないなか同紙は6月30日付の夕刊1面に続いて、7月1日付朝刊の1面でも大々的に報じている。これでも裏づけとしては不十分なので、神戸新聞に直接問い合わせてみたろころ、「当社のスクープであることに間違いありません」という返答を得た。主要メディアは神戸新聞のスクープという事実を黙殺していたのである。

神戸新聞の役割に光が当たらなかったものの、野々村氏の不透明支出問題は国内メディアばかりか海外メディアでも大きく取り上げられた。この点を考えれば、神戸新聞は地方発の世界的スクープを放ったといえよう。

しかも単なるスクープではない。お手本とすべき「エンタープライズスクープ」である。

5月23日公開の当コラムでも書いたように、エンタープライズスクープは調査報道とほぼ同義で、公益に資する報道だ。国民(神戸新聞の場合は主に県民)に知らせる必要があるにもかかわらず、放っておけば決して表に出てこないニュースを掘り起こしているからだ。

実際、野々村氏の不透明支出は神戸新聞の努力がなければ表に出てこなかった可能性がある。県議会の2013年収支報告書で報告されているとはいえ、記者クラブで関連資料が配布されたり、担当者による説明が行われたりするわけではない。つまり、記者クラブで記者が待機しているだけでは何も起きない。

今回は神戸新聞の記者2人(三木良太と岡西篤志の両氏)が問題意識を持って県議会事務局総務課へ出向き、自ら収支報告書を精査したことで初めて不透明支出が明らかになった。同総務課によれば、報告書の内容をコピーするには情報公開請求の手続きが必要になる。

2013年度収支報告書の公開が始まったのは6月30日午前9時半。三木と岡西の両氏は公開直後に同報告書の内容を調べ、同日付夕刊1面で「野々村氏 目的示さず300万」と報じている。限られた時間だったにもかかわらず、中面でも展開。そこには「野々村県議『交通費』突出 領収書の添付ゼロ」と題した解説とともに、識者コメントも載せている。

このスクープは大きな影響を及ぼし、県政を動かしている。県議会は野々村氏に対して辞職勧告するとともに、同氏を虚偽公文書作成などの疑いで刑事告発。再発防止に向けた検討会も設置している。同時に、兵庫県警が捜査に乗り出す一方で、市民団体はほかの県議にも不透明な支出がなかったかどうか調べ始めている。

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