二宮清純レポート ソフトバンク外野手長谷川勇也玄人を唸らせる「努力の天才」

週刊現代 プロフィール

「ただ、練習熱心ではありました。というより練習のムシ。試合が終わった後も、課題を見つけては素振りやティーバッティングをしていた。練習に付き合わされる下級生が気の毒でした。〝いい加減にやめたらどうだ〟と思ったこともあります。彼には妥協の2文字がありませんでしたね」

2部ながら3年秋のリーグ戦では4割9分の高打率を残した。プロのスカウトの目に留まるのに時間はかからなかった。ソフトバンクの担当は笹川隆だった。

「大学4年春の開幕戦(対大正大)は強烈なインパクトがありました。第2打席で三塁打を放つと、その後、ホームランを2本。走る姿も絵になる。アマチュアでは飛び抜けた存在に映りました」

だが、不安がなかったわけではない。

「いまひとつ積極性が足りないのが気になりました。自分の型にはまらなかったり、待ち球じゃないと打たないんです。ティーバッティングひとつとっても考えながらやっていることはわかるんですが、毎日のように試合が続くプロでは、それがネックになるんじゃないかと……」

'07年に大学生・社会人ドラフト5巡目でソフトバンクに入団。1年目は足のケガもあって、ずっと二軍暮らしだった。当時の外野陣は松中信彦、柴原洋、大村直之、多村仁と錚々たる顔ぶれ。この中に割って入るのは大変だった。

振り返って長谷川は語る。

「とにかく、ひたすら練習をして、自分の技術を磨いていく。それしか一軍でやるチャンスはないと思っていました」

転機はプロ2年目の8月、練習中のケガだった。左手小指を骨折したのである。その年のオフ、自主トレで母校を訪れた際、曲がった小指を見て江崎は驚いた。

「それで、どうやって打つんだ?」と聞くと、長谷川は小指を右手にかけるゴルフのオーバーラッピングのような握りを披露した。

「よく考えているなぁ」

江崎は感心した。

ゴルフのグリップは大きくオーバーラッピング、インターロッキング、そしてベースボールグリップの3つに分けられる。右打ちの場合、右手の小指を左手にかぶせるのがオーバー、小指を左手の人差し指と中指の間にはさむのがインター、ベースボールは野球のバットと同じ握り方だ。

参考までにいえば、国内女子ツアー史上最年少の15歳でKKT杯バンテリンレディスオープンを制した勝みなみはベースボール。ジュニアでは、この握りから始めることが少なくない。