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『マレーシア航空機はなぜ消えた』著・杉江弘(元日本航空機長)---あのマレーシア機はどうなったのか
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去る3月8日に起きた、MH370便の突然の失踪。知り合いに会うと、必ず「あのマレーシア機はどうなったの?」と聞かれる。

私が3月から4月にかけてテレビ番組等で事故の真相について解説してきたのを知っているからだ。それにしても、この現代においてボーイング777という大型ハイテク機が姿を消し、今なお発見の手がかりすら摑めないというのはどうしたことか。

私の42年間にわたる民間航空会社での乗務や、ライフワークである安全問題についての研究活動の経験をもってしても、「真実」に完全に到達することができない歯がゆさを感じている。

239名という尊い命が、このようなことで失われてよいものか。なんとか真実を突き止め、同様の悲劇を繰り返さぬために少しでも役に立ちたいという思いで、今でもこの事件に向き合っている。メディアに出演し、解説をするようになったきっかけは、失踪直後からのマレーシア当局の不可解な対応や、「識者」たちの誤った認識に基づく推理が報道されていることへの危機感であった。

当初流布された「ストーリー」は、当該機がクアラルンプール国際空港を発って約50分後に突如として交信が途絶え、レーダーの画面からも消えたという状況から、本来であればものの数秒で発信できるはずの緊急連絡すら発する余裕もなく、機体のトラブルやテロによって突然、「空中爆発」したのではというものだった。

マレーシア当局も、テロリストの犯行と見せかけるかのように、当該機には2人の不審な男性が席を並べて搭乗していたと発表。このとき、すでに摑んでいたはずの「事実」を隠そうとしたのであった。

MH370便が予定の飛行ルートから西に進路を変え、マレー半島の西の海域を飛行しているところまでを、マレーシア空軍のレーダーが捉えており、さらに、英国の通信衛星インマルサットによって南インド洋方面での到達(墜落)予想地点の情報ももたらされていた。つまり、機の失踪当日、マレーシア当局はすでにこれら「事実」を摑んでいたということだ。

加えて、あろうことか、機が予定されていた航路近くに墜落したとして、機体の捜索を当初、南シナ海に限定した。その結果、多くの国が参加したこの海域での捜索活動が無駄になったのである。

MH370便が失踪して以来、マレーシア当局が、情報をほとんどオープンにしていないばかりか、メディアを攪乱するためとしか思えない対応をしてきたことで、奇想天外としか言いようのない説がまことしやかに語られてきたことには憤りを覚えたものだ。