政治

雑誌 ドクターZ
天下の財務省夏の人事は「増税人事」

財務省の夏の人事が固まった。木下康司事務次官が退任し後任に香川俊介氏、主計局長に田中一穂氏といった布陣になった。彼らはいずれも「54年組」である。

「54年組」とは、昭和54年入省同期のこと。財務省に限らず、霞が関の官僚にとって入省年次は切っても切れない属性となる。霞が関を取材する記者が相手の入省年次を知らなかったら話にならないほど。ちなみに、各省のエリートが集まる官邸では座席表に名前のほか出身省庁名と入省年次が記載されていて、間違いが起きないように工夫されているくらいだ。

霞が関で入省年次が意味を持つのは、中央省庁のトップである次官になるのは通常は同期で1人だけ、その1人が次官になるまでに他の同期は退職するからである。

ところが、今回の財務省の人事ではこの慣行が破られた。過去にも財務省(大蔵省を含む)で同期から2人の事務次官を輩出したことはあるが、わずかに「28年組」、「49年組」くらいだろう。もっとも、他省庁まで含めれば、財務省同期から複数の事務次官が出ることは珍しくなく、「28年組」からはなんと6人の事務次官が輩出されている。経済企画庁、防衛庁、国土庁、環境庁、北海道開発庁などに事務次官を送り出すほどの力が財務省にあったからだが、さすがに今ではそれほどのパワーは持っていない。

いずれにしても、「54年組」は財務省内では盤石となった。主計局長は次の次官の指定席になっているので、今回の財務省人事で「54年組」の木下、香川、田中が続けて事務次官に就任することが確実。これはおそらく財務省の歴史でも初めてのことだろう。

ポイントは二つある。

一つは田中氏が次期次官の指定席である主計局長に就任したことである。主税局長から主計局長への就任は戦後初。これを田中氏が第1次安倍政権で首相秘書官を務めたことと照らし合わせてみると面白い。安倍氏が首相に返り咲かなかったら、田中氏の次官はなかっただろう。

安倍首相も田中氏を次官にするとしばしば漏らしているが、田中氏の力量を買っての意見ではなく、安倍首相自らの政治力を示したい意図が透けて見えている。「これが安倍首相の人事力なのだ」と見せつけられ、財務省も安倍政権が長期政権になることを見越した上で、異例の人事を受け入れている形である。

二つ目のポイントは、今年5月に創設された内閣人事局の初代局長に加藤勝信内閣官房副長官が就任したこと。初代局長には官僚OBが就くといわれていたが、菅義偉官房長官の政治主導人事で加藤副長官に逆転、深謀遠慮もあった。

実は加藤副長官は、財務省OBで「54年組」なのだ。財務省同期は仲がいい。かつて接待スキャンダルで話題になったが、「54年組」は金融機関持ちで、かなりいかがわしいところで「同期会」を開いたこともあるようだ。そんな若いときのすねに傷をもつ仲間。要は安倍政権が、加藤副長官による財務省の間接統治を行っていると見るのが正しい。この「仕組み」によって、厳しすぎず緩すぎない微妙な距離感で、財務省のやりたいことが通るようになる。

今回の人事で見えることは、これで消費税の10%への増税は決まりだということ。バーターとなる法人税減税も決まったし、人事も行った。いみじくも、麻生太郎財務相が7月4日の閣議後会見で人事の狙いを正直に言ってしまった。「消費税10%への増税を考えた万全の体制」だと。

『週刊現代』2014年7月26日・8月2日号より

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