「講座:ビジネスに役立つ世界経済」
【第52回】 「中国経済」の考え方

〔PHOTO〕gettyimages

「薄利多売型」の成長モデルは限界に達した

「BRICsブーム」に代表されるように、約5年前までは、中国経済が、世界経済を席巻し、やがては米国経済の規模をも上回るという議論があった。

これはITバブル崩壊以降、低迷が続く先進国経済に代わり、新興国市場を新たな収益源と考えた某米系投資銀行のセールストークという意味合いが強かったと思われるが、中国の短期的な景気指標に一喜一憂する市場をみると、いまなお、中国経済がかつてのような10%超の成長路線に戻ることを心待ちにしている人(特に市場関係者)が多くいるように思える。

中国経済は、すでに実質GDP成長率でいえば10%超の高度経済成長の局面を終え、今、低成長局面(といっても実質GDP成長率で5%程度)への過渡期にあると思われる。その最大の理由は、農村から都市部へほぼ無制限に供給されてきた安価な労働力が尽きたからに他ならない(経済学の用語でいえば、「ルイスの転換点」をすぎた)。

そのため、上海をはじめとする沿海部の工業地帯では賃金の上昇が著しく、為替レート次第では、日本の地方のほうが賃金が安い状況になっているともいわれている。

日本企業の中では、単純な製品の最終組み立て工程をべトナムやカンボジアといった地域に移転される企業も出はじめていると聞く。たとえば、今年5月にジェトロが発表した「第24回アジア・オセアニア主要都市・地域の投資関連コスト比較」によれば、一般工の平均月給は、上海が495ドルだったのに対し、ハノイは155ドル、プノンペンは101ドルだった。

中国の生産コストの上昇は賃金だけではない。社会保障の雇用者負担、事務所の賃料などを考慮すると、もはやかつての中国の高度成長を支えた「安価な製造コストで安価な製品を大量に輸出する」という「薄利多売型」の成長モデルは限界に達している。

これは、日本が1970年代半ばに経験した状況とほぼ同じである。当時の日本も、ちょうど1960年代の終わりに農村から都市部への人口移動が減少に転じ、安価な労働コストを背景とした輸出主導の高度経済成長システムが限界に達した。1人当たりのGDPをみると、現在の中国は当時の日本とほぼ同じ水準であり、しかも、ここまでは当時の日本とほぼ同じ道をたどってきている。

このことは、中国経済は、「構造要因(主に経済のサプライサイドの要因)」から従来の高度経済成長が不可能になったということを意味している。現在、中国の実質GDP成長率は、年率で7%台前半まで低下しているが、1970年代の日本の事例を考えると、今後、さらに成長率は減速し、最終的には高くてもせいぜい6%程度ではないかと予想される。

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