古賀茂明 日本再生のために(その1)---「加速する原発再稼動の動き」~税金を電力料金につけ回す検討がすすんでいる

古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジンvol097---日本再生のためにより

静岡県御前崎市にある浜岡原子力発電所(中部電力)---〔PHOTO〕gettyimages

倒錯した論理 「重要なベースロード電源」

集団的自衛権に国民の関心が集中する中、原発の生き残りをかけた動きが静かに進んでいる。

今回の特徴は、これまで、事実上与えられていた原発の特権に制度的な根拠を与えるということである。

例えば、原発事故が起きた時、損害賠償責任は、制度的には原発事業者にあるにも関わらず、事実上国民の税金と電力料金で負担することが行なわれている。

廃炉についても、制度上は、電力会社が自分の負担で実施する建前だった。放射性廃棄物の処理も国の責任で負担するとはどこにも書いていない。

しかし、これらの負担を全て電力会社の負担だということにすると、実は、とても負担できず、原発を民間のビジネスとして行なうことは不可能となってしまう。そのため、諸々の負担は、誰が負うのかは表向きは電力会社が負うように見せかけつつ、現に生じてどうしようもなくなったら、国と民間でうまく分担してやっていこうということが経産省を含めた原子力ムラの暗黙の了解だった。

ところが、東電の福島原発事故で、様々な将来負担が目に見える形で国民の前に明らかになり、国民は、そういうものは電力会社が負担すべきだと考えるようになった。東電に関しても、経産省は、表立って、事故の損害の負担を政府が負いますとか消費者に転嫁しますとは言いにくいので、表向きは東電の責任だとしながら、裏では国民や消費者につけ回しするとう迂遠なやり方を取り続けている。

こうした事態は、東電以外の電力会社から見ると、極めて不安な状態だから、何とかして、様々な負担を他人に押し付けるということを、制度的に担保する措置をとりたいと考えているのだろう。

その最たるものが、原発事故の際の電力会社の損害賠償責任を「法律によって」ごく小額に抑えてしまおうという動きだ。これは、福島事故直後から原子力ムラで密かに唱えられていたことだが、ついに、今年の6月12日には、原子力損害賠償のあり方について見直しするための政府の副大臣クラスの正式な会合が開催された。政治家が出る会議を開くということは、実は、裏で官僚による腹案が出来ているのが普通だ。つまり、驚くべきことに、原発事故の損害を政府に肩代わりさせる方針が実は政府内で既定路線になっているということなのだ。

さらに、6月19日には原発の円滑な廃炉を進めるための方策について、経産省の総合資源エネルギー調査会原子力小委員会で検討を始めている。廃炉を円滑に進める方策と言えば聞こえはいいが、裏を返せば、今のままでは円滑に廃炉できませんという意味になる。諸外国では、老朽化したり競争力を失ったり、安全対策の投資が出来なくなった原発の廃炉が進められている。核のゴミの処理を除けば、廃炉自体は決して難しいことではない。単にカネが必要だということに過ぎないのだ。それをわざわざ検討するということは、要するに、電力会社だけで廃炉をやるのは経営的に苦しいので、国民の税金や電力料金にうまくつけ回ししてくれということを検討するということなのだ。

これまでなら、こういうことは表立って議論されなかった。何故なら、そんなことを言うなら、原発なんかやめてしまえ、と言われるからだ。

しかし、今は違う。福島事故を経験して、脱原発の議論が広く行なわれた。しかし、結局は、脱原発は安部総理の指示で、完全に無視され、エネルギー基本計画において、「重要なベースロード電源」として位置づけられてしまった。

この「重要なベースロード電源」という言葉は魔法の力を持つようだ。原子力ムラはこの言葉を錦の御旗と振りかざして、とてもおかしな議論を展開し始めた。それも経産省の審議会でというような仲間内の議論だけではない。大手を振って日本中の国民に主張を始めたのである。

日経新聞のインタビューに答えて、中部電力の水野明久社長は、「事故が起きた時の賠償のあり方や使用済み核燃料の再処理など、原子力特有のリスクを民間の事業者だけで背負えるのか。・・・国がやるところと、我々がやるところを組み合わせないと難しい。・・・国も新しいエネルギー基本計画で原発を重要なベースロード電源と位置づけた。議論を突き詰めないといけない時期に来ている」と述べている。

彼らの論理はこうだ。

(1)原発は重要なベースロード電源である
(2)国もそれを認めている
(3)重要なベースロード電源であるからには、一定の範囲で原発は維持しなければならない
(4)しかし、原発には事故や核のゴミ処理など特有なコスト、リスクがある
(5)電力会社だけでそれを背負うとビジネスとしてやっていけない
(6)とりわけ、電力の規制緩和で競争が始まれば、原発は競争で負ける
(7)従って、国が民間事業者の負担を肩代わりして原発を維持すべきである


原発が重要なベースロード電源であることを前提にすれば、この議論は、一見もっともらしく聞こえる。しかし、鋭い読者であれば、彼らの言っていることは、完全に本末転倒の論理になっていることを簡単に見抜いてしまうだろう。

彼らの論理は実はいいとこ取りの議論である。それは、そもそも、原発が何故重要なベースロード電源として位置づけられたかを思い出せばすぐにわかることだ。その議論の前提にあるのは、原発は安くて安定的に供給できる電源だという考え方だ。特に、原発は他の電源に比べて安いということが、強調された。今でも二言目には原発が動かないから電気料金が上がる、原発を動かせばもっと電力料金は下がるのに、という議論が蔓延している。脱原発の人達でさえ、安全のことを考えれば少しくらい電気が高くても仕方ない、などと言って、原発が安いという議論を認める人もいるくらいだ。

しかし、上に紹介した中部電力社長の言葉が示すとおり、原発を民間事業者としてはやっていけないということは、原発は実は高いということを意味している。(以下略)

・・・・・・・・・この続きは、『古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジン』vol097(2014年7月11日配信)に収録しています。

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◆古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジンvol097 目次

―第1部― 日本再生のために
 1.加速する原発再稼動の動き
 2.集団的自衛権の行使容認に見る安倍政権の世論操縦哲学
 3.集団的自衛権でもう一度言いたいこと
―第2部― 読者との対話
―第3部― 古賀さんのスケジュール
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