中国
「米中2大国時代」を目論む習近平が発信した日米への明確なメッセージ
〔PHOTO〕gettyimages

1ヵ月間に及んだワールドカップの熱戦が、ついにドイツ対アルゼンチンの決勝で幕を閉じた。中国の友人は、こんな「中国の最新ニュース」を送ってくれた。

○準決勝で、開催国ブラジルは、ドイツに7-1と歴史的大敗を喫した。これは、試合のとき、訪中していたドイツのメルケル首相に対し、試合直前に首脳会談を行った偉大なる習近平主席が、パワーを与えたからである。この事実を知ったアルゼンチンのフェルナンデス大統領は、緊急訪中を要請したが、習近平主席は「気づくのが遅い」と断った。

○15日からブラジルで行われるBRICS(新興5ヵ国)首脳会議に参加する習近平主席に対し、ブラジルのルセフ大統領が「決勝戦をいっしょに見よう」と招待したが、習近平主席は断った。「4年後のロシアの決勝戦のチケットをすでに予約しているから」というのがその理由。偉大なる習近平主席は、4年後に中国が決勝に進出することを、すでに見越しているのだ。

こうした「ニュース」は、いわゆるアネクドート(政治小咄)と言われるものだ。アネクドートがいちばん流行ったのは、社会主義体制下の旧ソ連である。いまの中国は、それに近い「モノ言えば唇寒し」の状態になりつつある。いまや、こうしたアネクドートが飛び交う微信(ウエイシン=中国版LINE)に対しても、中国当局は規制を始めた。LINEにいたっては、7月1日から不通にしてしまった。

「歴史は最良の教科書であり、最良の覚醒剤である」

先週、習近平主席は、日本とアメリカに対して、明確なメッセージを伝えた。

まず日本に対しては、7月7日に北京の南西郊外・盧溝橋にある中国人民抗日戦争記念館で挙行された「全民族抗戦爆発77周年式典」である。習近平主席をはじめとする1000人以上が、この日に日中戦争が起こった地に結集し、中国中央テレビが緊急特番として中国全土に生中継したのだ。

午前9時58分、中国共産党序列4位の兪正声・全国政協主席が、式典の開始を宣言すると、全員で国歌斉唱。続いて、習近平主席と、抗日戦争に参加した新四軍(中国共産党武装勢力)の老戦士・焦潤坤、国民党の老戦士・林上元、それに二人の少年が、垂れ幕を引き上げた。すると、全長4m、幅3.2mの巨大な彫像が姿を見せた。この日に合わせて彫造された「独立自由彫像」で、中国人民の闘争の犠牲を恐れない精神を表現しているという。「中国人民抗日戦争全面爆発記念地 1937.7.7」という文字が彫られている。

続いて、習近平主席が記念演説を行った。

〈 1937年7月7日、日本の侵略者は、武力で中国全土を併呑しようという邪悪な野心を持って砲声を炸裂させ、中国および世界が震撼する盧溝橋事件を起こした。盧溝橋一帯は1時間にわたって硝煙が蔓延し、中国軍民は日本軍国主義の侵略に対して、頑強な抵抗を行った。ここ盧溝橋が発火点となり、北京と天津が危急の時を迎え、河北に広がり、全中国に広がり、中華民族は最も危険な時を迎えた。

この民族の危機に際し、中国共産党は民族の大義を保持しながら、民族存亡の危機を救うという歴史的任務を負って、国共合作をもとに民族統一戦線を張って日本の匪賊どもを中国から駆逐した。日本の侵略者たちの野蛮な侵略に対して、全国各民族、各クラス、各党派、各社会団体、各界愛国人士、香港・マカオ・台湾の同胞と海外の華僑たちは一心団結し、民族の生死を決する偉大な闘争に身を投じたのだった。各界の民衆万衆は一体となり、日本という敵の侵略に対抗していく一曲の勇ましい英雄凱歌を打ち鳴らしたのだ。

こうした偉大なる闘争の中で、中華の子女たちは、民族独立の自由を求めて熱血を注いだ。母は息子を、妻は夫を戦場に送り出した。北京の密雲県に住む鄧玉芬の母親は、夫と5人の息子を前線に送り、すべて殉死した。

同胞たちよ、同志たちよ、朋友たちよ! 偉大なる中華人民の抗日戦争は、中国人民の近代以降の自主独立を勝ち取った1ページであり、中華民族の歴史が発展し花開く1章である。

偉大なる中国人民の抗日戦争は、中華民族を過去にないほど覚醒させ、団結させた。まさに毛沢東同志が指摘したように、「戦争史上の奇観であり、中華民族の壮挙であり、驚天動地の偉業である」。

偉大なる中国人民の抗日戦争は、世界の反ファシズム闘争の東方の戦場を切り開いた。そして民族滅亡の危機を救い、民族独立と人民解放を実現し、世界平和の偉大な事業を奪取し、世界史に多大なる貢献をした。歴史は最良の教科書であり、最良の覚醒剤である。

誰もが遺憾に思うのは、中国人民の抗日戦争と世界の反ファシズム戦争の勝利70周年に近い今日、いまだに少数の人間(筆者注:安倍首相を指すものと推定される)は、歴史の事実を無視し、戦争中に犠牲となった数千万人の無辜の生命を無視し、歴史の潮流に逆行し、侵略の歴史を否定するどころか美化し、国際的信頼を破壊し、地域の緊張を作り出し、中国人民だけでなく世界中の平和を愛好する人民たちの激しい譴責を受けている。侵略の歴史を否定し、歪曲し、美化するいかなる者に対しても、中国人民と各国人民は絶対に相手にしないのだ!

同胞たちよ、同志たちよ、朋友たちよ! 中国人民の抗日戦争の歴史が証明しているのは、中華民族は頑強な生命力と非凡な創造力を有する民族だということだ。われわれは団結すれば克服できない困難などないのだ。

全党全国の各民族の人民たちは、偉大なる抗戦の精神をもって、一心団結の精神を不断に向上させる。そして中華民族の偉大なる復興という中国の夢に向かって、引き続き奮闘前進し、中国の特色ある社会主義の不断の発展を成し遂げると、われわれの先輩と英雄烈士に申し伝えるのだ! 〉

演説の要旨だけを訳しても、この長さである。演説文を読み上げる間、習近平主席は、まるで自分の演説に酔いしれるような表情を見せていた。その様子をテレビで見た私は、この演説文は習近平主席が本当に言いたいことなのだと再認識した次第である。

冷静に歴史を分析すれば、日本軍に対抗していたのは共産党軍ではなくて国民党軍であり、日本軍に勝利したのは共産党軍ではなくてアメリカ軍である。それが習近平主席の手にかかれば、壮大な感動の絵巻物のように、偉大なる中国共産党が悪の日本軍を駆逐する物語になってしまうのだ。

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