佐藤優のインテリジェンス・レポート---「集団的自衛権に関する閣議決定と公明党」~国連の集団安全保障措置による自衛隊の派遣が不可能になった~ほか
佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」Vol040 インテリジェンス・レポートより
【はじめに】

集団的自衛権に関するマスメディアの報道に、強い違和感を覚えます。今回の閣議決定を精読すれば、自衛隊を動かすことに対するハードルが以前よりも高くなっていることがわかります。

私は現在、精力的に「神学書」の仕上げに取り組んでいます。『人間への途上にある福音――キリスト教信仰論』(ヨゼフ・ルクル・フロマートカ著、平野清美訳、佐藤優監訳、新教出版社)です。チェコ語から訳しました。新教出版社主催で、以下の講演会を行います。そのときにはこの本は上梓されています。

●「連続神学講演会」第2回 〈危機を超克する福音――J.L.フロマートカの受肉論に学ぶ〉
  ※詳細は主催の新教出版社までお問い合わせください。
  ※本講演会の詳細はこちら ⇒ http://bit.ly/1lWgtwL

分析メモ No. 89「集団的自衛権に関する閣議決定と公明党」

公明党の山口那津男代表---〔PHOTO〕gettyimages

【事実関係】
1. 7月1日、安倍政権は、憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定(「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」)を行った。

2. 1.の閣議決定後、公明党の山口那津男代表が、閣議決定に関する記者会見を行った。

【コメント】
2.―(1)
7月1日、公明党の山口那津男代表が、「外国の防衛それ自体を目的とする、いわゆる集団的自衛権は、今後とも認めない。憲法上、許される自衛の措置は自国の防衛のみに限られる。いわば個別的自衛権に匹敵するような事態にのみ発動されるとの憲法上の歯止めをかけ、憲法の規範性を確保した」(7月1日 公明新聞)と述べた。

この発言について朝日新聞は、<山口氏の主張は、武力行使をしてもあくまで「自衛の措置」であり、従来の公明党の主張と整合性があることを強調したものだ。だが、閣議決定の中では「『武力の行使』は国際法上は、集団的自衛権が根拠となる場合がある」と明記されており、山口氏は国際法上と憲法上の評価を使い分けるという苦しい対応を迫られた形だ。>(7月2日 朝日新聞デジタル)と批判した。

「苦しい対応」という朝日新聞の評価は妥当でない。なぜなら、従来、日本政府は国内法と国際法の立場を使い分けることをしていたからだ。かつて政府が行ったインド洋での石油供給、イラクへの自衛隊派遣も日本政府が個別的自衛権で説明しても、それは国内的説明にすぎず、国際法的には集団的自衛権の行使と解釈するのが通常である。

2.―(2)
記者会見で山口代表は、「これまでの政府の憲法解釈の基本的論理は維持されたことから、憲法9条に関し、この基本的論理を変える解釈変更はできないと、その限界を示した。つまり、その場合は憲法改正が必要だということを明確にした」(7月1日 公明新聞)と述べた。この論理からすると、国内法で集団的自衛権の行使を規定する場合は、憲法改正が必要になる。

3.―(1)
記者会見で山口代表は、与党協議の内容について、「安保法政懇の報告書に対し、公明党は、政府が長年取ってきた憲法解釈を基本に慎重な対応を求めてきた。これに対して首相は、議論の方向性を示すに当たり、政府の憲法解釈と論理的整合性を取ることが重要だとの考えを示した。個別的か集団的かを問わず自衛のための武力行使は禁じられていないという考え方や、国連の集団安全保障措置など国際法上合法的な措置に憲法上の制約は及ばないという考え方を採用しなかった。これには大きな意味があった」(7月1日 公明新聞)と述べた。実はこの部分が、今後、安倍政権が集団的自衛権の行使に踏み込む際の最大の障害になる。

3.―(2)
まず、国連の集団安全保障措置による自衛隊の派遣がこれで不可能になった。

3.―(3)
次に、「サイバー兵器、国境を超えるテロ組織の活動によって、主権国家や交戦団体(武装闘争を展開する反政府組織)が国際法の主体であるという前提で考える個別的自衛権、集団的自衛権という概念自体が現実に対応していない。今後は自衛権という観点から安全保障政策を構築すべきだ」という論理で、実質的に集団的自衛権を行使するという道も塞がれた。・・・・・・(以下略)

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」vol040(2014年7月10日配信)より

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