環境・エネルギー
日本を停電する国に後戻りさせないために、いま私たちがすべきこと
〔PHOTO〕gettyimages

ほとんど思い出せない停電の経験

最後にシュトゥットガルトで停電を経験したのは、10数年も前の話。送電線に何か不都合が起こり、昼間、突然、電気が止まった。工事だったのか、落雷だったのかは、思い出せない。でも、冷凍食品が溶けてしまったというような記憶はないので、ごく短時間だったのだろう。

日本での最後の停電は、もちろん、震災後の計画停電だ。当時、私の日本での住居は池袋のど真ん中だったので、輪番停電地域には含まれなかった。しかし、震災の5日後、ドイツに戻る予定になっており、その頃はまだ成田空港までの交通事情が不確かだったこともあり、一日前に成田入りしたら、その夜、ホテルで計画停電が実施された。

大きなホテルだったので、廊下には非常用の灯りがあちこちに灯ったが、部屋は真っ暗になった。その頃は余震が頻繁にあったので、ホテルの9階の暗闇の中、一人揺れているのもなんだと思い、1階のレストランに行った。すると、やはり皆、そう思ったらしく、宿泊客がキャンドルライトの下で粛々とご飯を食べていた。

そういえば、昔、ブルガリアのホテルでも停電に遭った。もちろん、こちらは計画停電ではない。ブルガリア人の友人が結婚するというので、一家をあげてブルガリア第2の都市プロヴディフへ行って式に参列し、そのあと、黒海の畔の観光地ブルガスで数日を過ごしたリゾートホテルでのことだった。

夜、部屋にいたら、唐突に電気が消え、世界が真っ暗闇になった。まだ小さかった娘たちが怖がって泣き始めた。そういえば、子供たちは停電など経験がない。そういう私も、物心ついてからのこういう停電の経験は、ほとんど思い出せなかった。

5人で部屋からバルコニーに出て、外を眺めると、ホテルの敷地内は真っ暗で、その闇の中から、人の声だけがザワザワとのぼってきた。目を凝らしても何も見えないというのは、とても変な感じだ。

子供たちに向かって言う。「怖くないわよ。ほら、お船が見える」。

目の前の黒海はそれこそ文字通り真っ黒だったが、そこに浮かぶ船だけが、ポツリポツリと光の点になって見えた。そして、頭上には満天の星。忘れられないシーンだ。

とはいえ、このままひと晩中、真っ暗ならどうしようと思っていたので、しばらくして、パッと明るくなったときは、天照大神が天岩戸から出てきたようにホッとした。そのとき、部屋がやけに白茶けて、なぜか安っぽく見えたのを覚えている。

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