増え続ける空き家 防災、環境面で深刻な問題に
自治体の対策支援へ秋にも特措法制定[特集]

市街地の空洞化などで増える空き家=北海道函館市で5月8日

少子高齢化や地方の過疎化などで十分な管理がなされないまま増え続ける空き家の解消に向けて、議員立法による特別措置法制定の動きが活発化してきた。自治体が取り組む空き家対策をバックアップしようというもので、自民、公明両党が法案をまとめて秋の臨時国会での成立を目指している。ただ、空き家解消のネックである固定資産税の住宅地優遇の扱いなどははっきり記しておらず、今後の調整が大きな焦点となってくる。防災・防犯上や景観・環境面で深刻化している空き家問題。対策の条例を定めた自治体は最近急増しているが、自治体レベルでの権限に限界があり解消も思うように進んでいないだけに、法案の行方が注目される。

総務省の住宅・土地統計調査は5年ごとで直近のデータは08年と古いが、それによると、全国の空き家は756万8000戸。全住宅5758万6000戸に占める空き家率は13・1%に上る。1998年の空き家数が576万4000戸、空き家率は11・5%だったから10年間で約180万4000戸と31%増え、空き家率は1・6ポイントアップした。

13年の調査については今月下旬にも速報値が出される予定だが、空き家数、空き家率は08年をさらに上回ると見られる。

日本の住宅事情は、終戦後しばらくは住宅数よりも世帯数が多く、住宅不足が続いた。国や自治体は住宅不足解消を政策課題の重点に挙げて取り組み、多くの住宅建設が進んだ。その結果、高度経済成長期後半の68年には総住宅数が2559万戸になり、総世帯数(2532万世帯)を超えた。その後も住宅供給は減ることなく、73年には全都道府県で総住宅数が総世帯数より多くなった。08年の調査では総住宅数は総世帯数の4997万世帯を762万戸も上回っており、長年の住宅建設促進政策のつけが空き家急増の形になって表われている、と指摘する専門家もいる。

また、少子高齢化と地方の過疎化が進んだことや、バブル期の地価の高騰で大都市周辺部で開発が進み多くの住宅が建設されたものの、バブル崩壊後、大都市部の地価の下落とともに都心回帰が起き、周辺部の空洞化が見られるようになったことも空き家増の要因になっている。

空き家が増えても、管理が行き届いていれば問題はないが、各自治体を悩ませているのが老朽化したものや管理不十分な建物だ。所有者が遠くにいたり、管理意識が低かったり、所有者の管理資金不足などで放置されるケースも少なくない。所有者の死亡により相続人が多数いたり、権利関係が複雑化して所有者が分からなかったり、所有者の所在がつかめないことなどから、自治体などが適正な管理をするよう求めることができずに放置され老朽化した空き家も多い。

更地になると課税がアップ

老朽化や危険な空き家の解体・撤去が進まないのは、所有者が利用が定まらない跡地に多額の費用をかけるのを躊躇することなどが挙げられる。そればかりか、住宅を解体・撤去すると固定資産税などの優遇措置を受けられず税額が大幅に増えることや、接する道路の条件が悪く、撤去しても新たに建物を造ることができないという問題があることも指摘されている。

住宅が建つ敷地の固定資産税は住宅1戸について200平方メートルまでが6分の1、200平方メートルを超える部分については3分の1に軽減されている。市街化区域内にかかる都市計画税についてもそれぞれ3分の1、3分の2となる軽減措置がある。住宅の建築年数や居住の有無には関係なく、住宅がなくなると200平方メートル以下の場合で固定資産税は6倍、都市計画税は3倍に跳ね上がってしまい、所有者にとっては解体・撤去に費用をかけたうえに税金が上がるという二重の負担を強いられることになる。

ただ、東京都内の不燃化特区では老朽住宅を20年末までに解体・撤去して更地にした場合は、最長5年間、固定資産税と都市計画税の8割が減免される制度がある。

接道については、住宅などを建てるには敷地が幅4メートル以上の道路に2メートル以上接していなければならないという建築基準法の規定がある。08年の住宅・土地統計調査では、全空き家の土地のうち接する道路が幅4メートル未満だったのは33・2%で、道路に接していないものが3・8%もあった。

賃貸、売却用や別荘など2次的住宅を除いた「その他の住宅」に分類される空き家では4メートル未満が41・1%、道路に接していないものは4・9%あった。建築基準法が現在のものに改正される以前に建てられたものと考えられるが、全空き家のうちの約37%、「その他の住宅」の空き家の約46%は解体・撤去しても現状では跡地に建物を建てることができず、隣や近所の土地所有者らの協力がなければ新たな活用は困難になっている。

空き家が抱える多くの問題について検討を進めている自民党の空き家対策推進議員連盟(宮路和明会長)と公明党のプロジェクトチームが今年4月にまとめた「空家対策の推進に関する特別措置法案」は、適切な管理が行われていない空き家が防災、衛生、景観などの面で地域住民の生活に深刻な影響を及ぼしているとして解消に向けて国や自治体の取り組みを示した。

法案の中で注目されるのが、市区町村が空き家の所有者を把握するために固定資産税情報を利用できるようにすることや、立ち入り調査や命令を出す権限を与え、命令に従わない場合の罰則規定を明記し、行政代執行による解体・撤去を可能にすることなどだ。

特に、空き家所有者については、市区町村の担当者が登記簿や住民票などで調べてもかなりの手間と時間がかかったり、分からなかったケースが多かった。住所、氏名が記されている固定資産税の情報は厳しく守秘義務が課せられ税務担当者以外は利用できなかったが、法案では「必要な限度において」としながらも市区町村の空き家対策担当部門で内部利用できるとした。

ただ、法案では固定資産税の扱いなどについては「必要な税制上の措置その他の措置を講ずる」としただけではっきり示していない。優遇措置をめぐっては、解体・撤去した所有者には「そのまま軽減を続ける」「適用期間を区切って軽減する」「軽減を続けた場合は先に自主的に撤去した所有者と不公平が生じる」「空き家になった時点で優遇措置からはずす」――などさまざまな意見が出ている。

各党とも基本的には法案について賛成の意向を示しているが、一部野党からは固定資産税の特例の扱いをどうするか、方向性をはっきりさせるべきとの声が出ている。このため与野党はこの夏に自治体などから意見を聴くなどして国土交通省、総務省や税務当局などを含めて詰めの作業に入り、秋の臨時国会にも提出、15年度の税制大綱に固定資産税の扱いについても盛り込みたいとしている。

空き家対策は特別措置法の制定を待つまでもなく国交省のほか農林水産省、文部科学省、厚生労働省が連携し、活用に向けての交付金や基金などで支援策が実施されている。特に国交省は08年から「空き家再生等推進事業」として空き家を改修して活用する事業と除却(解体・撤去)事業を行っており、空き家活用では自治体が行う場合は、改修費、住宅取得費、所有者を特定する費用の半分を国が補助し、民間が行う場合は国と自治体がそれぞれ3分の1ずつ補助する。解体・撤去の除却事業では自治体が行う場合は解体・撤去などの費用を国が5分の2を補助し、民間の場合は国と自治体が5分の2ずつ補助する。

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