19年度までに定員枠30万人分拡充
来年度から新支援制度 自治体は事業計画策定と条例制定[学童保育]

放課後に遊ぶ子どもたち=神奈川県横須賀市の「岩戸大矢部学童クラブ」で13年6月26日

政府は共働きや一人親家庭などの児童を預かる「放課後児童クラブ」(学童保育)の定員枠を19年度末までに約30万人分拡充する方針を明らかにした。安倍晋三内閣が策定した「成長戦略」にも女性の働きやすい環境整備として盛り込んだ。15年度から始まる国の「子ども・子育て支援新制度」で各自治体は今年度中に事業計画の策定と関連条例の制定が義務付けられ、学童保育は大きな節目を迎えている。一方、保育の現場からはさらなる量と質の拡充を求める声が高まっている。

安倍内閣が日本を再興するために打ち出した「成長戦略」では「女性の活用」が重要な位置を占めている。これまでは乳幼児を預かる保育所の待機児童解消のための整備拡充に重点があったが、子どもが小学校に入学した後に預け先が見つからずに就労が途切れるという「小1の壁」の解消の必要性が指摘されていた。

民主党政権時の2010年1月に閣議決定された「子ども・子育てビジョン」でも30万人増をうたっていたが実現していない。今回の「成長戦略」で改めて来年度から5年間に、厚生労働省が所管する学童保育の定員枠を30万人分拡充することを明記し、併せて文部科学省が07年度から始めた全児童対象の「放課後子ども教室」との一体化を進める方針も定めた。

学童保育は、昼間に保護者が家にいない小学生が特定の施設に集まり、おやつを食べたり、遊んだりして放課後や夏休み期間を過ごす取り組みだ。保育所は戦後間もない1947年に制定された児童福祉法で各市町村に実施が義務付けられたのに対し、学童保育は法的位置付けがないまま、自治体や地域の保護者らによる自主的な取り組みから広がってきた。97年の同法改正で「放課後児童健全育成事業」としてようやく法制度化され、「おおむね10歳未満の児童」と小学1~3年生を対象にした。

厚労省によると、学童保育は13年5月現在で全国に2万1482カ所あり、登録児童数は88万9205人。共働き世帯の増加や児童が巻き込まれる悪質な犯罪の続発で、放課後の子どもの安心・安全への関心が高まっていることを背景に毎年増え続けている。この10年間でもクラブ数は57%増、登録児童数は64%増となっている。

市町村に申し込んでも定員枠をオーバーしたり、利用時間が合わないなどの理由で利用できなかった待機児童数は13年度で8689人という。だが、民間の全国学童保育連絡協議会は、保育所の卒園児童数や働く母親の割合などから潜在的な待機児童は40万人以上と推定している。政府目標の定員枠30万人増でも足りない数字だ。

学童保育は、法制化された後も施設の基準や指導員の専門資格など条件整備が遅れ、社会的な認知度が高いとは言えない状況が続いている。しかし、その役割の重要性と必要性が高まっている。

同協議会の調べでは、学童保育の運営主体は公立公営が全体の約4割で、民間が主体でも行政が開設して地域の運営委員会や保護者会が運営する形や、NPО法人や社会福祉法人、さらに民間会社が運営するところもある。開設日数は年間290日以上が57・2%と過半数を占め平均で283日。保護者の帰宅時間が遅くなる傾向があり、低学年の場合は、放課後の滞在時間は年間1681時間と、学校にいる時間1221時間よりも長く過ごしている。それだけに「毎日の生活の場」として良好な環境が求められるという。

開設場所は学校施設内が52・8%で最も多く、児童館内(12・6%)、学童保育専用施設(8・0%)、その他公的施設(8・7%)などで、民家・アパートも6・4%ある。規模は厚労省が07年に策定した「放課後児童クラブガイドライン」で「おおむね40人前後が望ましい」としたが、40人以上のクラブが全体の48・7%もある。

指導員の待遇改善が急務

学童保育のクラブで働く指導員は全国で約9万2500人。平均では児童40人のクラブで4・44人いる。公営の正規職員は全体のわずか2・9%で、民間の正規職員18・6%のほかは全体の約8割が非正規だ。待遇は68・2%が年収150万円未満で、300万円以上は5・8%にとどまる。非正規職員の多くは時給で社会保障がないのが実情だ。劣悪な雇用条件と学童保育の急増で、勤続年数が3年未満の人が半数を占めている。指導員の待遇面での改善と、子どもの健康や安全の管理、生活や遊びの指導などの仕事の専門性への理解向上が求められている。

このような状況を受けて12年8月、子ども・子育て支援法など関連3法が制定された。支援法で学童保育を市町村が行う事業と位置付け実施責任を明確にし、国の交付金を受けるために15年度から5年ごとの「子ども・子育て支援事業計画」の策定が義務付けられた。また、改正児童福祉法で対象児童を6年生までの小学生に引き上げ「小4の壁」の解消も狙った。学童保育の指導員の資格や配置基準などについて初めて厚労省の省令で定め、各自治体は実施条例を策定する義務を負った。

省令では、「放課後児童支援員」を支援の単位ごとに2人以上配置▽開所日数は原則年間250日以上▽専用区画を設け、面積は児童1人当たり1・65平方㍍以上▽集団に規模はおおむね40人以下――などとしている。専用区画の面積は「施設全体の面積を児童数で割った計算で狭すぎる」という声もある。同協議会は「これは守るべき最低基準で自治体は上乗せした基準を設けるべきだ」としている。しかし、職員に関する基準以外はあくまでも「参酌」で自治体は従う義務はなく、地域の状況によってばらつきが出る可能性がある。

政府は07年の「放課後子どもプラン」で学童保育と放課後子ども教室の「一体的に、または連携して実施」と、厚労省と文科省の事業の連携強化をうたったが、一体型施設は全国で約600カ所とあまり進んでおらず、「成長戦略」ではそれを1万カ所以上に増やす方針を示した。

しかし、学童保育は「家庭に代わる生活の場」であるのに対し、放課後子ども教室は空き教室を利用したさまざまな活動の場であり「そもそも取り組みの背景や目的が違う。子ども教室は学童保育を代替するものではなく、連携強化は必要だが一体化はなじまない」(真田祐・同協議会事務局次長)という意見が根強い。子どもたちの放課後の安心・安全な生活の場を巡る課題はまだまだ多い。

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