特別連載 平成版・南蛮阿房列車 「鉄道の世界遺産」をめぐる旅 第1回 「マチュピチュへの登山列車」

小牟田 哲彦 (現代新書『世界の鉄道紀行』)
世界遺産でもNo.1クラスの人気を誇る「マチュピチュ遺跡」の全景。実は交通アクセス手段は鉄道のみ

「インターネット上に数え切れないほどの個人旅行記が綴られるようになり、活字の紀行作品が旅行の情報源として重視される時代ではなくなった。だが、明治や大正期の紀行文が今も色褪せないように、情報は古くなっても文学は必ずしも古くならない。紀行という分野が文芸の一角を成している所以(ゆえん)である」(2014年7月18日発売予定、現代新書『世界の鉄道紀行』の「はじめに」より)

日本全国、そして世界各国でひたすら汽車に乗って旅し続けてきた著者による『世界の鉄道紀行』。平成版の“南蛮阿房列車"ともいうべき世界各国の愉快な鉄道紀行を、この現代新書カフェから区間限定で先行運転します。第1回は「マチュピチュへの登山列車」。数ある世界遺産の中でも常にトップクラスの人気を誇り、鉄道が唯一のアクセス手段となっているマチュピチュ遺跡を目指す観光列車から、本書の旅が始まります・・・・・・ (地図&時刻表 板谷成雄、写真・著者)

『世界の鉄道紀行』は7月中旬発売予定。本書でしか読めないレア路線など全20作の紀行文を収録

世界中に約1000ヵ所存在する世界遺産のうち、日本で常にトップクラスの人気を集めるのが、日本から遠く離れた南米ペルーのマチュピチュ遺跡である。海外の世界遺産を特集する雑誌には必ずと言っていいほどマチュピチュが紹介されているし、遺跡の全景を隣の山の上から見下ろした写真が表紙を飾ることも少なくない。

この山上の遺跡へは市街地から自動車道路が通じておらず、現代では珍しく鉄道が唯一の交通手段となっている。そのような立地だったからこそ、20世紀初頭まで発見されず今なお解明されていない謎を持つ神秘の遺跡となり得たのであろうが、おかげでマチュピチュでは、観光客向けの専用列車が古くから運行されてきた。

しかも、マチュピチュ行き列車の始発駅があるクスコの街も、かつてインカ帝国の首都として栄えた時代の面影と、その後に侵入してきたスペイン人が建設したコロニアルな街並みとが見事に融和し、街並み全体が世界遺産に指定されている。つまりこの鉄道は、目的地(マチュピチュ)と起点(クスコ)の双方が別々の世界遺産になっている、世界でも珍しい路線なのである。