「講座:ビジネスに役立つ世界経済」
【第51回】 FRBは「出口戦略」を急ぐか?

〔PHOTO〕gettyimages

経済指標が全般的に力強さを取り戻しつつある

7月3日の6月米雇用統計は、ある意味ショッキングな結果となった。多くの市場参加者が注目する非農業部門の雇用者数は事前の市場予想(21万2千人)を大きく上回る28万8千人増となり、完全失業率も6.1%と、約6年ぶりの低水準となった。

それに伴い、7月3日の米10年国債利回りは2.657%となり、再び上昇基調に入ったようにみえる。株価も堅調で、7月3日のニューヨークダウ工業株30種は17,068.26ドルと、17,000ドルの大台を超えた。

このような「株高・金利高」は、市場参加者の景気の先行きに対する見方が強気に転じた場合に起こる現象である。1-3月期の米国実質GDP成長率は季節調整済前期比年率で-2.9%と大幅に減速したが、寒波の影響による一時的なものであるという解釈が定着したようである。

量的緩和に踏み切った段階で、FRBは、完全失業率が6.5%を恒常的に下回った段階で量的緩和を解除し、その後、短期間で利上げに踏み切ることが暗黙の了解事項となっていたといわれている。

ただし、6.3%の完全失業率が6.5%の水準に短期間で逆戻りすることは十分にありえる。そのため、完全失業率が6.3%まで下げてもすぐには利上げが展望できるとは限らない。

だが、6.1%まで下がってしまえば、6.5%に逆戻りするリスクは大幅に低下する。よって、完全失業率が6.1%まで低下したことで、FRBの金融政策スタンスがよりタカ派的になる可能性が出てきたのではなかろうか。

さらにほかの経済指標も全般的に力強さを取り戻しつつある。その中で、ここ数ヵ月で顕著になってきたのは、インフレ率の上昇傾向である。たとえば、FRBが金融政策を決めるうえで重視しているといわれるコアPCEデフレーター(消費支出デフレーター)は前年比で+1.5%にまで上昇してきた。

米国経済はリーマンショック後のFRBの大胆、かつ迅速な量的緩和発動で、緩やかながらも着実に回復してきたが、その間、インフレ率はなかなか上昇せず、一部では、「デフレ局面」入りも懸念されてきた。FRBの金融政策の目標は物価と雇用の安定であるため、インフレ率の低下傾向は、FRB首脳が出口政策の実施を躊躇させるに十分な経済指標であった。

しかし、これが上昇し始めたということは、米国経済はデフレのリスクから遠ざかりつつあるということを意味している。そのため、今後、FRB内部のタカ派が勢いづく可能性がある。

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