スポーツ

[野球]
上田哲之「グリエルの気品」

2014年07月08日(火) スポーツコミュニケーションズ

 カッコいいなぁ、グリエル。

 横浜DeNAに新加入したユリエスキ・グリエルである。ご存知のように、「キューバの至宝」と呼ばれる内野手だが、キューバの政策もあって、日本のプロ球団と契約することが可能になった。キューバと言えば、巨人のフレデリク・セペダやレスリー・アンダーソンもそうだけれども、グリエルはちょっと別格である。

 と言うと、異論がありそうだ。DeNAではそんなに大した活躍をしていないではないか。同じキューバ出身の選手なら、ドジャースのヤシエル・プイグの方がよほどすごいんじゃないの……。いいえ! と断じておきたい。この人には他の選手にはない何かがある。まずは、活躍したシーンから見ておこう。

 6月29日のDeNA-広島戦。広島の先発は野村祐輔だったが、1回裏無死一、二塁から、グリエルは外角スライダーをとらえて、センター前タイムリー。スライダーを、ごく自然に右方向にもっていった。これがよほどこたえたのか、3回裏の第2打席、野村はストレートの四球。明らかに、逃げていた。

 そして5回裏、2死一塁で打席にはグリエル。初球は内角低目にシンカー。ボール。これで野村はグリエルに5球連続ボール。さて2球目。内に一球はずしておいてから外の変化球、という勝負の外角スライダー。これをスカーンと打つと、打球は大きな弧を描いてレフトスタンドへ。一時は逆転となる4号ツーランとなった。

 いや、外国人選手の1本のホームランをもの珍しがっているわけではない。目を奪われるのは、そのスイングである。この人は、やや左肩を入れた構えで、顔をその肩に乗せるように構える。北京五輪やWBCのときもそうだったと記憶するが、ただ、肩の入り具合は少し深くなったように見える。ポイントは、その肩に乗せた顔が、みごとに投手に正対していることだ。

 ステップはするけれども、上げた左足がそのまま元の位置に着地するのではないかと思うくらい前に行く幅は小さい。ステップする以上、当然、体はわずかながら前に出るが、このとき、顔の位置がまったく動かないかのように見える。すなわち目の位置を一切動かさないまま、ボールを見る。そうして振り出されたバットの軌道は、実に前が大きい。すなわち、センター方向に向けて、体の前で大きく扇状の軌道を描く。これが、素晴らしくいいんですね。だから、当たれば打球は遠くへ飛ぶ。

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