トーマス・フリードマン---【広場の人々 VOL.02】民衆の声は政治を変える真の力になり得るのか?
トーマス・フリードマン

プーチンは、いかなる政治的抗議も自然には起こり得ないと信じている。大勢のウクライナ人が、腐敗の終わりとEUとの関係の強化を求めて、キエフの広場に集結したとすれば、それは、CIA(アメリカ合衆国中央情報局)かNATO(北大西洋条約機構)、もしくはEUがけしかけたか、金を払ってやらせたに違いないという考えだ。

すべての発想がトップダウンであるプーチンにとって、グローバル化とIT革命の2つが組み合わさることによって、「人々」がこれまで見られなかったものが見られるようになり、また、それに対して協力し合いボトムアップを図るツールを手にしたということは、理解をまったく超えたことなのである。

プーチンは過去に倣い、天然資源を使ってロシア帝政国家の再現を図ろうとしている。これに対し、キエフの広場の人々は未来に目を向け、自分たちの人的資源を開発するために、EUとの関係を構築しようとしている。キエフの広場の人々は、ウクライナの経済とヨーロッパを統合させることで、自分たちがボトムからは実現できず、指導者もトップからは決して実行しないような、司法上の改革や透明性、規制などが国を超えてもたらされるだろうと考えている。キエフの広場の人々にとっては、EUとウクライナの提携は、国内刷新に不可欠な手段だが、プーチンにとっては、彼の「勢力範囲」に対する直接の脅威となる。

エルドアンに敗北したトルコの「広場の人々」

レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領---〔PHOTO〕gettyimages

これと同様にトルコでも、レジェップ・タイイップ・エルドアン首相が、イスタンブール中心部のタクシム広場の近くにある唯一の緑地帯にモールを建設しようとしたことで、自然に反対運動が起こったが、間もなくそれは、彼の独裁的支配に対する抗議となって広がっていった。

エルドアンは怒り狂った。それまでは、自分たちと、脅かし手なずけて完全に去勢された正規のトルコ野党とテレビ局のみの二党世界を作り上げていたからだ。そんななかでトルコの広場の人々は、ツイッターやYouTubeを通して、新たな反対勢力と独自のテレビネットワークを構築した。

しかしエルドアンは、広場の人々よりもうまく立ち回り、選挙で再三の勝利をおさめた。どうしてそんなことができたのだろう?------その答えは、金曜日(2014年5月16日)の Forbes.comのトルコからのレポートにある。

エルドアンの主な選挙地盤となっている農村部の人々は、YouTubeやツイッターを使っていない。彼らは「テクノロジー音痴で、テレビがニュースの情報源となっている」が、そのテレビ局はエルドアンの支配下にある。「テレビのニュース局は、抗議による破壊や憎悪だけを映し、最終的に、過激なトラブルメーカーが国にもたらした混乱を印象付けるような映像だけを抽出した」。プーチンもモスクワとウクライナで、これと同じプロパガンダを使ってきた。

民衆の声を反映する政党はなぜ作れないのか?

自分たちが望めば選挙はできるが、選挙を勝ち取り、民衆の声を反映できる政党は作れないという失敗は、カイロのタハリール広場での「ウォール街を占拠せよ」運動などに見られる、広場の人々のアキレス腱となっている。

この問題に関する、非常に優れた本『権力の終焉』の著者であるモイセス・ナイームは、アトランティック誌に最近、次のように書いた。

今日、「ツイッターやフェイスブック、またはテキストメッセージによる抗議の表明は、特にどんなものであれ、私たちを憤慨させるようなことに抗議する場合には、確実に大衆を引きつける。しかし問題は、デモ行進をしたあとに何が起こるかだ。ストリートを埋め尽くすデモ隊の背後に、抗議をする人々の要求をフォローアップして、政府に真の変革をもたらすための複雑な、対面による、そして退屈極まりない政治的作業を円滑にこなすことができる、より恒久的組織が控えていることはめったにない。