官々愕々 都議会「暴言問題」と記者クラブ
海外では「性的虐待」といった強い言葉で表現された---ガーディアン紙のwebサイトより

東京都議会のセクハラ暴言問題。女性の妊娠、出産などに関するみんなの党の塩村文夏都議の質問中に、議席から「早く結婚した方がいい」「自分が産めよ」「産めないのか」などの暴言が浴びせられた。

この件の報道は溢れているが、本稿では少し違った視点で考えてみたい。

当初、鈴木章浩都議も自民党もセクハラ発言を完全否定するかに見えたが、批判が世界中に広がったことから方針を転換。鈴木都議は、「結婚しろ」発言を認めて、自民党から会派離脱した上で、塩村都議に謝罪した。しかし、議員辞職は拒否。同時に、鈴木都議と都議会の吉原修幹事長は大々的な記者会見パフォーマンスを演じた。

この会見を見て一つの仮説を考えた。

鈴木都議の席は自民党席後方。幹事長の席はその斜め後ろだ。塩村都議は、一連の発言は同党席後方からだと明言した。発言はかなりの大声で、録音もされている。それなのに、幹事長は気づかなかった。幹事長が自民党都議をヒアリングしても、全員が聞いていないと言う。いかにも不自然だ。

後方は幹部の席。つまり、自民党幹部が問題発言をした可能性が高い。それをかばうために、みんなで「聞いてない」という嘘をついているのではないか。

途中、自民党本部の石破茂幹事長などが、「名乗り出て謝罪せよ」と発言したが、これも、「自ら名乗り出て謝罪すればよい」という相場感を先に作り、鈴木都議の謝罪に、「勇気を出してよくやった」「これにて一件落着」というシナリオだった。

こんな仮説は、都庁の記者クラブにいれば誰でも思いつくし、その確認もできる。彼らは日常的に都議会を傍聴している。この日も同様。録音までして発言者を知っている記者もいるという。彼らは日頃から飲み会などで自民党議員とべったりだから、懇意の議員10人に「この人ですよね」と当たれば全員が嘘をつき通すということはないだろう。

にもかかわらず、自民党がこのまま幕引き可能と考えたのは何故か。吉原幹事長や鈴木都議の会見を見た人は皆、非常に歯がゆい思いをしたはずだ。都庁クラブの記者が遠まわしの質問に終始し、同じ答えを聞いて引き下がる。厳しい質問をするのはテレビ局のリポーターとスポーツ紙の記者だけ。

都庁クラブの記者は、日頃から議員や役人との付き合いで癒着関係を築き、そのよしみで情報をもらって東京都関連の記事を書いている。与党幹部相手に一人だけ厳しい追及をしたら、あとで情報をもらえなくなる。だから、阿吽の呼吸で談合し、適度な「厳しさ」で質問をするのだ。

自民党はこう見切っている。

「これだけの暴言だから、記者たちも批判せざるを得ないが、それもほどほど。議員辞職を強く要求するような記事は出ない。謝罪パフォーマンスで面白い記事ネタを提供して、あとはあっさりと幕引きする。国民も熱しやすく冷めやすい、時が経てば忘れてしまう」

鈴木都議は生け贄。その裏で「産めないのか」発言をした党幹部は逃げ延びる。それに手を貸す記者クラブという図式。こんな制度は即刻廃止すべきだ。

では、私たちにできることはあるのか。自民党や自民党都議・国会議員、新聞社・テレビ局に、メール、電話、ファックスで、怒りの声を届けよう。ツイッター、フェイスブックもある。デモもできるし、盛り上がってきたら、リコール運動も可能だ。逃げ回る自民党幹部たちが特定されて議員辞職するまで続けよう。

都民、国民は馬鹿じゃないぞ、と見せてやろうではないか。

『週刊現代』2014年7月12日号より

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