「メジャーデビューも就活も違うと思ったんです」 チームラボで働く学生ミュージシャンが創りだす音楽家像
音楽家・國本怜

「音楽で、食べたい」

わかりやすい道として、メジャーデビューがある。地道にライブ活動をして、レコード会社の人に拾ってもらう。そしてCD発売。多くのスターがそのような道を歩んできた。

もしそれが厳しいなら、音楽に関係する仕事をする、という手段がある。レコード会社に勤める。ラジオ局に勤める。ライブハウスに勤めるのもありだ。音楽で飯を食いたいだけなら、やり方は意外と選べる。

でも、ほんとうに選択肢はそれだけなのだろうか? そもそも音楽で食べるってなんなのか。「◯◯で食べたい」という欲求を、深く考えたことがあるだろうか。

ひとり、紹介したい学生がいる。音楽家の國本怜(くにもと・れい)だ(かれは「音楽家」という立場に強くこだわる)。

慶應義塾大学文学部4年次に在籍する彼は、1年前に音楽ユニット「N.O.R.K(ノーク)」を立ち上げた。ライブを行うことなく、就職活動をすることもなく、1ヵ月に1本、ミュージックビデオをYouTubeにアップしつづけた。

ところが現在、彼らの音楽はCDショップで買うことができる。発売直後の5月には、インディーズでありながらタワーレコード渋谷店に平積みされた。雜誌『EYESCREAM』4月号でも、大きく取り上げられたばかりだ。音楽家としては順風満帆と言える。

しかし、彼は言う。

「いわゆるプロミュージシャンは目指してないんです」

その姿は、ウルトラテクノロジスト集団・チームラボにあった。

新しい夢の追い方を、考えます。

5/14にリリースしたN.O.R.K.のミニアルバム『ADSR』より、"Yell Out"

リクルートスーツを着ても、自分のやりたいことは表現できなかった

--今年で最終学年とのことですが、就職活動はどうですか?

國本: まだ来年いくところは決まっていません。というより、昨年夏のインターン選考で就職活動は挫折してしまったので、きちんとした「就活」をしないままここまで来てしまいました(笑)

--挫折というのは?

國本: ひらたく言えば、広告代理店の選考に落ちました。いま思えば、そもそもリクルートスーツ着てネクタイ締めて、「ぼく音楽やりたいんです」って意味わからないですよね。

ほんとうは、自分のセンスを表現する私服を着て、CDを持っていって「ぼくこういう音楽作ってるんですけど、あなたの会社でこんなことやりたいです」って言うべきだと思うんです。ただ、その受け皿は新卒採用の枠組みにはなくて。結局ろくに自分を表現できないまま、面接に落ち続けました。

--それで就職活動はやめてしまったんですか?

國本: はい。ただ音楽に携わるだけなら、ミュージシャンにこだわらず、就職活動もいいと思うんです。レコード会社や広告制作会社を筆頭として、音楽を扱う仕事はたくさんあるので。広告代理店を受けたのもその流れでした。

でも、ぼくは音楽でやりたいことがあって、それは新卒一括採用の枠組みではやりにくいと思いました。

--いまはメジャーデビューを目指しているんでしょうか?

國本: 実は以前、メジャーデビューのお誘いはいただいたことがあって、ありがたいお話だったんですが、結局は固辞させていただきました。ぼくが音楽でやりたいことは、メジャーデビューという方法でもできない気がして。それでいまは、フリーのミュージシャンやディレクター、エンジニアとして活動しています。

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