「超入門 資本論」【第7回】
資本主義経済がはらむ大きな皮肉

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【第6回】はこちらをご覧ください。

前回は、剰余価値の種類(つまり、企業が利益を出せるパターン)を解説しました。マルクスが指摘した通り、企業の利益の源泉が「労働者を給料以上に働かせること」しかないのだとすると、もはや企業は必然的に「特別剰余価値」を生み出すことを狙うしかありません。「他社よりもうまく!」を考えざるを得ないのです。

しかし、ここに大きな皮肉があります。この特別剰余価値を生み出そうとする行為自体が、やがては自分たちの首をしめていくことになるのです。

特別剰余価値は、企業が利益拡大を図るための最後の手段です。どんな企業でも、この特別剰余価値を目指すしかありません。しかし、特別剰余価値を目指すまさにその行為によって、企業の利益率は下がり、倒産に向かっていくのです。

特別剰余価値は、やがて消滅する

特別剰余価値は、他社よりも効率よく生産すれば生み出せます。しかし裏を返すと、他の企業がマネできない有利な条件がないと生みだせない、ということです。

資本主義経済においては、ほぼ全ての企業がその有利な生産技術を目指して日々研究・競争しています。ですから、周りの企業も同じような技術を開発していたりしますし、他社の成功事例はどんどん取り入れていきます。特許や、よほどの独自技術を持っていないかぎり、A社の技術はやがてはB社、C社にも広がり、社会全体が同レベルの生産性になっていくのです。

資本主義経済では、このような競争は必然です。すべての会社が「より多くの利益を!」と考えているため、この流れは止まりません。

企業は絶えず自分の利益を増やそうと努力しています。だから、この特別剰余価値は、絶えずいろいろな分野で発生しているのです。そして、発生した特別剰余価値は、技術やノウハウが世間一般に広まるにつれて価値を失い、やがて「特別」ではなくなってしまうのです。

特別ではなくなるというのは、それが「社会平均」になるということです。他社よりも多く利益を得ようと切磋琢磨してやっとたどり着いた水準が、「当たり前の水準」になってしまうということです。

当然、既にそこではより生産性が向上していますので、少ない労力・時間で商品を生産できるようになっています。つまり、生産された商品の価値は下がっているのです。ある商品Aの生産コストが下がると、その商品を材料にしている商品Bの「価値」も低下していくことになります。

商品の価値は、その商品を構成する原材料の価値の合計だということを思い出してください。資本主義経済においては、何もしなくても商品はどんどん価値が下がっていくということなのです。これはなにも特定の商品だけの話ではありません。資本主義の構造が「技術革新」&「コスト削減」なので、世の中全体としてこのような価値低下が起こるのです。

分かりやすい例はパソコンなどのIT機器です。数年前に最新機種として20万円程度で販売されていたモデルは、いまや数千円の値段しかつかないでしょう。それくらい「価値」が低下したということです。

その商品の用途や、消費者に与えるメリットが変わらなくても、競争により原材料の値段が下がれば、自分が作っている商品の価値も下がってしまうのです。

ジョブズが数年前にiPhoneを発売した時には、大変なインパクトと感動がありました。しかし、その技術はすぐに世の中に広く知れ渡り、今では「当たり前の商品」になっています。これから数年後には、スマホが数千円に成り下がっていることも容易に想像つきます。

値段が下がったのは、その商品を見飽きたからではなく、その商品を使わなくなったからでもなく、その商品が世の中に普及したからでもありません。「その商品を作るのに時間がかからなくなったから」です。「商品の価値が低下した」という点が重要なのです。

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