最高裁が朝鮮総連中央本部ビルの売却中断決定の裏側
2002年9月、当時の小泉純一郎首相のお供で訪朝した安倍首相                      photo Getty Images

日本と北朝鮮双方の思惑が絡むだけに、朝鮮総連中央本部ビルの競売はひと筋縄では行かず、迷走が続いている。6月19日には、最高裁が売却手続きを停止する執行停止決定を出し、売却が中断した。

最高裁決定で朝鮮総連本部ビル売却問題は有効なカードに

途中過程はどうあれ、最終的には日本政府、朝鮮総連(北朝鮮)、落札業者のマルナカホールディングスの3者が納得しなければ、問題は解決しない。そして、最高裁が売却を中断するまでに、水面下では3者の合意を目指す交渉が進んでいた。

「官邸は、一回目の入札の頃の総連系企業への売却を阻止する方針を転換、総連の継続使用を認める方向でマルナカへの説得に入っていました。総連は、地裁や高裁のマルナカへの売却を認める決定に対し、執行抗告で抵抗する一方、マルナカの売却に備えて資金的な“受け皿”を用意していた。マルナカは、『所有権が移転すれば総連には出て行ってもらう』という方針は変えないものの、密かに転売先を探していました」(朝鮮総連に近い不動産業者)

3者バラバラだった思惑が、「継続使用」に向けた動きに変わったのは、日朝協議における「拉致被害者の安否の再調査」の進展である。「再調査」は帰国を意味し、既に「生存者リストが存在する」といった情報まで駆け巡るなか、安倍晋三首相は、5月29日、「全ての日本人拉致被害者と特定失踪者の再調査を実施」を含む日朝合意を発表した。

最高裁決定は、そうした流れに水を差すようでいて、実はそうではない。結果的に、安倍政権が期待する「拉致被害者らの帰国につながる有効的なカード」として、今後も機能することになった。