スポーツ

二宮清純レポート
31歳、楽天ゴールデンイーグルス二塁手
藤田一也 挫折が生んだ「守備職人」の覚悟

2014年07月06日(日) 週刊現代
週刊現代

ドラフト4巡目で横浜入りした藤田を待ち受けていたのは、石井琢朗らプロの高い壁だった。体格に恵まれない自分は打撃では敵わない。藤田は「守備で生きる」ことを決意した。それから10年、地味で堅実な男は、「日本一の名手」になった。

10勝に値する守備

非常事態発生である。

5月26日の東京ヤクルト戦、神宮球場の三塁側ベンチに東北楽天・星野仙一監督の姿はなかった。

球団によれば、持病の腰痛が悪化し、都内の病院で治療を受けた。検査の結果、腰椎の椎間板ヘルニアおよび胸椎の黄色靱帯骨化症と診断されたという。

星野は都内の宿舎で「俺は絶対に復帰してやる。見とけよ」と語ったが、手術を受ける意向で、復帰には1ヵ月以上かかる見通しだ。

この事態を受け、楽天の選手会長・藤田一也は、こう言った。

「勝つことで監督が治療に専念できるように、僕らが頑張っていきたい」

藤田は星野門下の優等生だ。滅多なことでは選手を褒めない星野が、こと藤田に話が及ぶと頬が緩んだ。

「藤田の守備には10勝以上の価値がある」

昨季、楽天は球団創設9年目にして初のリーグ優勝、日本一を達成した。

日本一の立て役者は言うまでもなく24勝0敗1S、防御率1・27という好成績でMVP、沢村賞、最多勝など合わせて10個のタイトルを獲得した田中将大(現ヤンキース)だが、守備のスペシャリストとして田中を支え、セカンドで自身初のベストナイン、ゴールデングラブ賞に輝いた藤田の存在を忘れてはならない。

感謝の気持ちを込めて田中は語っていた。

「藤田さんの守備には何度も助けられた」

それほどまでに藤田の守備は素晴らしかった。とりわけ田中が投げている試合でファインプレーが多かったのには理由がある。

藤田は言う。

「将大の場合、三振を取ろうと思えば、いくらでも取れるんですが、球数を減らす意味もあって、普通の場面では〝打たせて取る〟んです。セカンドへのゴロが多かったのはそのため。

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