中国
習主席はサッカーがお好き!? W杯中継の裏で魑魅魍魎がうごめく中国の政治とメディア
〔PHOTO〕gettyimages

中国でも連日、中央テレビが実況中継するワールドカップに、14億国民が酔いしれている。だが解説者に一人だけ、中国語を話せない人物が投入されている。昨年夏に現役を引退した、あの元イングランド代表チーム主将のデイビッド・ベッカム(39歳)だ。

なぜベッカムが、中国のテレビの解説者をやっているのか?

中央テレビの関係者に聞いたら、次のように答えた。

「習近平主席は、大のサッカーファンとして知られ、今回もテレビに釘付けになっている。習夫人の彭麗媛はサッカーファンではないが、以前からベッカムに首ったけと聞く。そこで、最高権力者夫妻のご機嫌を取ろうと、大枚をはたいてベッカムにご出演願ったのだと、テレビ局内では噂している。

たしかに、習近平の贅沢禁止令が吹き荒れるわが国では、世界のブランド品が絶不調で、撤退が相次いでいる。そんな中、売上げが急上昇しているのが、高級車のジャガーと、高級腕時計のブライトリングだ。

理由は、どちらもベッカムを中国国内のイメージキャラクターに起用しているため、(賄賂用の)贈答品にしても睨まれないと言われているからだ。習近平夫妻の意向で、もしかしたらベッカムは、次期中国代表監督に就任するのではないか」

サッカーにも政治が関与してくるという中国中央テレビ内の「雰囲気」は、私には何となく想像できる。

中国のテレビ局でまかり通る「紅包」

6月1日、中国最高法院が、中央テレビの全15チャンネル中、一番の稼ぎ頭である「第2チャンネル」(経済報道チャンネル)の総監(トップ)で、広告主任でもある郭振玺と、名物プロデューサーの田立武を、「腐敗分子」として拘束し、取調中であると公表した。このニュースは、中国メディア業界全体を震撼させた。

毎年大晦日の晩に「第2チャンネル」が4時間ブッ通しで放映する「中国年度経済人物」は、中国国内のノーベル経済賞授賞式のような看板番組で、私も毎年楽しみに見ている。ある年の「中国年度経済人物」に輝いた若手電機メーカーの経営者は、トロフィーを受け取りながら、涙ながらに語った。

「私はこれまで何度も東京・品川のソニー本社に足を運んだが、いつも門前払いを受けてきた。それが今日の受賞で、ようやくソニーを見返すことができた・・・」

この感動の授賞式で「中国年度経済人物」を選定するのが、郭振玺総監だった。田立武は、その部下のプロデューサーだ。中国最高法院によれば、郭総監らは多額の賄賂を受け取っていた容疑がかかっているという。一説によると、総額20億元(約320億円)にも上るとか。

たしかに、中国のテレビ局というのは、この手の「紅包」(付け届け)がまかり通っている。一兵卒の新米記者だって、どこかの企業を取材すれば、取材した企業から「お車代」として500元(約8,000円)くらいはもらえる。

私は2年前まで北京で住んでいたマンションが、北京テレビの近くで、付近のスタバでしばしば、この手の光景を目にした。ふんぞり返ったプロデューサーと、ペコペコ頭を下げる会社社長という構図だ。

自社製品をテレビで取り上げてほしい、経営するレストランをテレビで取材してほしいなどなどで、脇からそっとお茶の入った袋を差し出すのだ。その袋の底には、「紅包」が入っているのだろうと想像できた。

お茶を受け取ったプロデューサーが、「それでは、考えておこう」と言い、業者側が「何とかお願いします」と頭を下げて席を立つというパターンだ。中には新番組のプロデューサーと若手女子アナという組み合わせもあった。新番組の司会者をお願いする女子アナに、プロデューサーが遠まわしに「お付き合い」を要求し、「契約」を成立させている場面も目撃した。

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