読書人の雑誌『本』より
2014年07月08日(火) 江上剛

『負けない日本企業』著:江上剛---アジアで見つけた復活の鍵

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負けない日本企業』著:江上剛
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私は、かつて2006年から07年にかけて中国、インドなどアジア各国を取材したが、その際の問題意識は「奮起せよ、日本!」だった。

2006年の日本は、国民一人当たりの名目GDPが過去最低の18位になるなど、国力がずるずると低下している状態だった(残念ながらこの傾向は、いまも変わらず13年には24位にまで低下している)。

しかし当時はそれほどアジアは注目されていなかった。日本企業はアジア重視を打ち出してはいたものの腰が入っていなかった。政府も同じだ。

私は、日本経済の再生のためにはアジア各国と真剣に付き合うべきだと考えていたが、取材で直面したのは、多くの日本企業がアジア各国で悪戦苦闘を強いられ、撤退を余儀なくされているという現実だった。安い労働力だけを求めて生産拠点としてアジアに進出する時代はすでに終わっていたのだ。私は、アジア各国との付き合い方を考え直さなければならないという思いを強くした。 

その後の日本経済は、2008年のリーマンショック、11年の東日本大震災とそれに伴う福島第一原発事故と大きな危機が続いた。特に原発事故による電力不足は経済界ばかりではなく国民生活をも深刻な不安に陥れた。

さらに尖閣諸島国有化に端を発する日中関係の険悪化。かつてない規模で反日暴動が拡大し、多くの日本企業が被害を受けた。中国は日本にとって最大の経済取引相手国だ。中小企業を含む多くの企業が進出していた。中国の安い労働力と豊かな市場がなければ日本経済は立ち行かない状態にまで関係が深まっていたのだが、政治的リスクが一気に高まってしまった。

国民は民主党政権を見限り、自民党政権を選択した。なんとか経済を建て直して欲しいという一心からだ。

再登板となった安倍晋三首相にとって沈滞する日本経済の建て直しは、自分自身の政権基盤安定のためにも最優先で取り組むべき課題だった。安倍首相は「アジアの成長を取り込む」を標榜し、積極的にアジア各国を訪問した。

一方、経済界も切羽詰まっていた。アジアの成長をいち早く取り込まないことには、経営基盤が揺らいでしまうからだ。

しかし私は「アジアの成長を取り込む」という言葉になんとも言えない懸念を覚えた。その一つは、この言葉には、アジアの成長を日本のためだけに活用しようという魂胆が含まれているように思え、日本の驕りを感じたのだ。果たしてそんな見え透いた魂胆を抱いてアジアシフトをしていいのだろうか。

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