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『おいしい穀物の科学』
コメ、ムギ、トウモロコシからソバ、雑穀まで
井上直人=著

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ごはんやパンの見方が変わる!

●白米と玄米の違いとは?
●コシヒカリはどこから来た?
●種まきでなく田植えをする理由は?
●五穀米とは何を指すの?
●コムギはなぜパンにして食べるの?
●味の良い精米とは?
●トウモロコシはコメより需要があるの?
●信州ソバが有名になった理由は?
●遺伝子組み換えトウモロコシとは?
●水田や焼畑は環境にやさしいの?


はじめに

 私たちは、毎日ご飯やパンなどを食べている。ご飯はコメで、パンはムギであり、いずれも穀物である。穀物はヒトにとって最も身近で大切な食べ物だが、私たちはどれほどそれを理解しているのだろう。

 たとえば、コシヒカリ。有名なブランド米だが、コメにブランドがあるのはなぜか。そして、どんな違いがあるのだろう。そもそも、おいしいコメとはなんだろう。

 あるいは、どうしてイネは水田で育てたり、田植えをするのだろう。農家が真夏に水田の水を抜いたり、精白したりするのはなぜだろう。ムギはなぜパンにするのだろう。雑穀とはなんだろう。アジアではイネが、アメリカではトウモロコシが、ヨーロッパではコムギが多く栽培されるのはなぜだろう。信州ソバが有名な理由はなんだろう。

 穀物に対するこうした疑問を、科学的に説明するのは簡単ではない。ヒトは長い期間をかけて好みに合わせて穀物を栽培してきたため、その進化には生物学的な要因だけでなく、労働の効率、美意識、食感、嗜好のような人間的な要因が強く働いている。したがって、穀物について説明するときは、複合的な視点が必要になる。

 そこで本書は、「三大穀物」とされるイネ、ムギ、トウモロコシについて、その進化や栽培化の過程と、食料としての特性などに重点を置き、自然科学に人文科学的な視点も交え、専門分野を横断した解説をしようとした。また、近年、コメにアワやヒエを混ぜて食べる方も増えているので、雑穀についても触れている。農学だけでなく、温室効果ガスなど環境科学の研究成果も取り入れ、穀物を幅広く理解できるようにした。

 ブランド米については、系統図を用いて血縁関係がわかるようにした。ブランド米の味には、品種だけでなく、人や土壌、風、水などの風土が関係していることも農家の具体的な品質データーを用いて解説した。

 また、世界のソバの加工・利用方法を系統的に示した図は、本書が初めてである。本書はコメを中心に記述してあるが、ソバも三大穀物にひけをとらない加工の多様さがあり、日本の「蕎麦切り」はたいへん手の込んだ食品であることがおわかりいただけるだろう。

 近年、農産物の生産者と消費者の溝はかつてないほど大きくなり、穀物は多くの市民にとって「ナゾ多き食品」になりつつある。しかし、それを学ぶことは、食料問題、エネルギー問題、健康、食品開発、伝統文化、食味、先端農業技術などを知ることにもつながる。これをきっかけに、「穀物の科学」に興味を持っていただければ幸いである。

著者  井上直人(いのうえ・なおと) 
信州大学学術研究院農学系教授、信州大学総合工学系研究科教授。一九五三年東京都生まれ。農学博士(京都大学)。信州大学農学部卒業、帯広畜産大学大学院修了、長野県畜産試験場・農業試験場の研究員、京都大学農学部助教授を経て二〇〇二年より信州大学教授。研究分野は作物学、植物栄養学、民族植物学。日本草地学会賞、日本作物学会賞(論文賞など)を受賞。著書に『雑穀入門』(共著・日本食糧新聞社)や『食と緑の環境科学』(共著・信濃毎日新聞社)。

 
『おいしい穀物の科学』
コメ、ムギ、トウモロコシからソバ、雑穀まで

著者:井上直人

発行年月日:2014/06/20
ページ数:224
シリーズ通巻番号:B1869

定価:本体860円(税別)
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(前書きおよび著者情報は初版刊行時点のものです)