雑誌 企業・経営
うちの製品は制御技術が細やかだから、紙を一度にたくさん処理でき、音も静か。シュレッダーの市場を一変させる自信がある。
サカエ 松本弘一

ペンタゴンやFBIなどで機密保持のため使われているシュレッダーに、日本企業「サカエ」の技術が利用されている。長くOEM(他社から委託され製品を作ること)でシュレッダーを生産しており、国内オフィス向け製品の約35%は同社製と言われていたが、'13年に『シュレッドギア』を自社から販売し世界へ乗り出した。ほかにも、航空機の部品など難易度の高いモノづくりに挑み、東京商工会議所による『勇気ある経営大賞』の受賞歴もある、松本弘一社長(59歳)に話を聞いた。


まつもと・こういち/'54年、東京都生まれ。'77年、慶應義塾大学工学部を卒業し、サカエへ入社。三菱電機群馬製作所で2年間の研修を経て、'79年2月より現職。シュレッダーなどの事務機器、ヒーター機器、医用・科学機器(糖尿病検査装置)を3本柱にしており、香港などにも拠点を持つ同社を率いる ※サカエのwebサイトはこちら

以前、採用面接で必ず「反抗期はありましたか」と聞いていました。面接で萎縮し本心がいえない人も多いのでやめたんですが、反抗期があった人を採用したかったんです。大きな夢を叶える原動力は、親や世間の想像を超えて現状を変えてやる、という反抗心だと思うんです。弊社もOEMでシュレッダーをつくってきましたが、自らの努力と責任で考えた商品を出したいと考え、自社販売を始めた。それは、私がいまだ反抗期だからです(笑)。

大は小を兼ねず

有名な製品の部品も数多くつくっています。たとえば大手コンビニチェーンに使われている速熱性、耐腐食性に優れたコーヒーマシン用ヒーターや、新幹線や最新型航空機のヒーター用の部品・・・・・・。

弊社製品が選ばれる理由は、他社が挑戦しないリスクに挑戦するからです。難しい発注があると、よそさまは「今までにない部品をつくって何か起きたら・・・・・・」と手を引いてしまう。弊社は社員150名程度の企業だから、トップである私が現場も知っており「この部品ならいける!」などと判断して、とるべきリスクはとれるんです。

世界最高 昨年「中小企業事業者政策緊急フォーラム」で、世界最高水準の「セキュリティレベル7」を実現した商品を安倍首相に見せた。写真右が松本氏

帝王学

24歳で社長になりました。弊社は私の父が大手電機メーカーの製造下請けとして設立したのですが、私が入社してすぐ、父が急死してしまったんです。「誰かに教えを請わねば!」と大学のOB名簿をめくって電話しまくると、当時の日本IBMの椎名(武雄)社長に会っていただけることになった。その時、壁には同社創業時につくった古い時計が飾ってあって「今は時代の流れでコンピューターをつくっているが、特定の事業に固執はしない。経営は世の中や時代に合わせて行うものだ。それを忘れないよう飾っている」とおっしゃったんです。

私が学んだ帝王学の原点ですね。同時に私は「それもそうだけど、こんな偉い人だって、頼めば大学を出たばかりの若造に会ってくれるものなんだな」と思いながら話を聞いていました(笑)。

座右の銘?

好きな言葉は「朝令暮改」(爆笑)。市場は常に変わっている。逆に朝令暮改を恐れちゃいけない。

シンプルに

さまざまな経営者からアドバイスをいただく中で、印象的なものもありました。「社長なんて人を安く使って、売れるものをつくればいいんだ」と言われたんです。もちろん社員を安く使おうとしてもみんなが働いてくれなくなるだけですが、これくらいシンプルに考えればよいということがわかった。