坂井直樹「デザインのたくらみ」

「デザインしないデザイン」という新潮流 ~デザインの大量生産への警鐘~

2014年06月20日(金) 坂井 直樹
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深澤直人氏が「without thought」というプロジェクトで考えた壁掛式CDプレーヤー(2000年、無印良品)

「新しいモノを生み出したい」という企業の欲望は、果たしてどこまで続くのだろうか。

かくいう私も、デザインに関わる身として、新しいモノを数多く生み出してきた。デザインとは、モノと人との接点を設計することであり、その役割は、主に新しいモノを生み出すことだ。しかし近年、「これ以上、新しいモノはいらないのではないか?」という潮流が見え隠れする。デザインや、人とモノとの関係は、今後どのように変化していくのだろうか?

「格好良さ」から「機能性」へ

本当にこれ以上、新しいモノは必要ないのか。人とモノとのベストな関係を考えるために、まず簡単に「デザインの流れ」を理解したい。「良いデザイン」の定義の移り変わりからデザインの流れが見えてくる。

1980年代のバブル経済期に入ると「個性的消費」の時代が到来した。当時はモノが溢れる豊かな時代であり、生活に必要な物は充分にあった。だから人々は、より個性的な物を欲した。よって、良いデザインとは「格好の良いデザイン」だった。より個性的な"絵"が良いデザインとされ、世の中に風変わりな物が溢れていた。

デザイン業界でも格好良いデザインに賞が与えられるようになった。毎年風変わりなデザインが受賞し、デザインはアートのように一般の人たちにはよくわからない世界になっていく。

そんな中、1990年を過ぎてバブルが崩壊する。すると、経済の悪化や地球温暖化の影響も受け「格好良さよりも機能性が大事ではないのか」という声が聞こえてきた。デザインエンジニアの登場だ。表面的な格好良さよりも使い勝手の良いモノがいい。デザインの"絵"は「ふつうで良い」という主張だ。

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