読書人の雑誌『本』より
2014年07月10日(木) 加賀乙彦×堀川惠子

【特別対談】加賀乙彦(作家・精神科医)×堀川惠子(ジャーナリスト)---戦争・死刑・日本人 『宣告』と『教誨師』から読み解くこと

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堀川惠子著『教誨師』は、戦後半世紀にわたり死刑囚と向き合ってきた浄土真宗の僧侶が、死刑執行にも立ちあうその過酷な任務を語り、死刑制度が持つ苦しみと矛盾を描き切ったノンフィクション作品である。

精神科医であり、長く拘置所の医務官を務めた作家・加賀乙彦氏の『宣告』は、自らの体験をもとに死刑囚の生活と懊悩から、死刑制度を真正面から描き、一九七九年の発表以来、多くの読者に読み継がれている長編である。

お二人に、それぞれの著書を出発点にしてさまざまなことを語ってもらった。

 

『教誨師』(きょうかいし)著:堀川惠子
税抜価格:1700円 ⇒Amazonはこちら

加賀 先日、山折哲雄さん(宗教学者)と会ったら、『教誨師』を激賞していましたよ。

堀川 それはそれは恐縮です。

加賀 戦後長らく教誨師を務めた(本書の主人公の)住職さんに、堀川さんが向き合うわけですが、話を聞くうちに書きたくなったのか、あるいは書くためにいろいろ聞いていったのですか?

堀川 私も取材者なので、(住職)渡邉普相さんから話をうかがっているうちに形にできるな、という下心はありました(笑)。しかし、丸一年は教誨についてはまったく語ってくださらなかった。でも、拒絶されているとは感じませんでしたから、「明日、近くまで行きますから、お寺に寄っていいですか?」。そんなやり取りが続いた後、ある日突然「よし、話そう」とご住職から言っていただいたんです。私のほうは準備ができていなかったので、「え?」という感じでした。

加賀 人から話を聞くときは、それが一番でしょうね。いろんなことを知ってから訪ねても、相手からは迫力をもって迎え入れられないものですよ。はじめは何も言わなかった人が、あるときたいへん雄弁になって多くを語ってくれる。僕の経験と一致して、この本はほんものだ、と思いました。

堀川 ただし、長年の体験を語っていただきましたが、「最近の死刑囚については書かないでくれ」と釘を刺されましたので、渡邉さんから聞き取ったことの七割ぐらいは、実は書いていません。

加賀 それがいいんじゃないですか。死刑について事実を書いたことの意味が非常に大きいんだと思います。

いったい何者であるのか

堀川 加賀先生の『宣告』(新潮文庫)を先日も読み直しました。バー・メッカ事件で死刑囚となった正田昭さんを主人公に、精神科医で拘置所の若き医官であった先生との交流が基となった長編です。

加賀 『宣告』が出版されたのは四十九歳のときでした。僕はそれまでに十六年間、正田昭と文通をしていました。それで彼という人間をある程度理解していたつもりだったんです。獄中で洗礼をうけ、信仰についても多くを僕に語っていた。

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