[サッカー]
風間八宏×二宮清純<後編>「個と組織の利益が一致するチームを」

W杯スペシャル対談

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高まるJリーグの存在価値

二宮: 日本は今回のブラジルW杯で5大会連続出場となりますが、代表が強くなったきっかけがJリーグの誕生にあったことは間違いありません。世界的なプレーヤーがどんどん来日して日本のレベルを引き上げました。そんな中において風間さんが所属したサンフレッチェ広島が2年目のファーストステージで優勝したのは衝撃的でした。風間さんと森保一さんのダブルボランチに、エースストライカーの高木琢也さん、盧廷潤、イワン・ハシェック、パベル・チェルニーと各選手の個性がうまくかみ合って、おもしろいサッカーを展開していましたね。
風間: おもしろいサッカーというのはいろいろな定義があるでしょうが、ひとつは各選手の持ち味が出ることだと考えています。選手の色が見えれば、やっているほうも見ているほうも楽しい。当時の広島は相手に合わせるのではなく、どうやって自分たちのサッカーをするかに主眼が置かれていましたね。ボールはつながるし、シュートもどんどん打てる。最終的には年間王者を勝ち獲れませんでしたが、こういうサッカーもあるんだと、Jリーグの歴史の中でも最初に変化をつけられたチームではなかったかと感じています。

二宮: Jリーグとともに日本サッカーが発展する中で、海外に移籍する選手が増えてきました。風間さんは海外でのプレーが一般的ではない時代に、ドイツに渡りました。やはり、Jリーグ創設前の日本サッカーリーグは魅力が乏しかったと?
風間: 海外に渡ったのは知らない世界に対する興味ですね。小学、中学時代には誰よりもサッカーがうまいと思っていたのに、ユース年代になると世界に勝てなくなって、代表に入ると試合すら、なかなか組ませてくれない。その現状を知って、行けるものなら高いレベルでプレーしたいと考えました。僕の場合はチャンスがあってドイツに行くことができましたが、今の日本であれば、敢えて海外に行く必要はなかったかもしれません。それだけレベルの高い選手が揃っていますから。

二宮: 選手流出によるリーグの空洞化が課題と言われる中、風間さんは「海外でプレーすることがすべてではない」というのが持論ですね。
風間: Jリーグはいろいろ問題点を指摘されていますけど、現に国内で若手がすごく伸びてきている。今回、代表には選ばれなかったものの、候補にあがっていた選手はたくさんいました。それがリーグの力だと思います。国内リーグの充実なくして、その国は強くならない。Jリーグでプレーする価値を改めて見直すべきだと思います。

二宮: イングランドのプレミアリーグや、ドイツのブンデスリーガなどは世界中から注目され、各国からトップ選手が次々とやってきます。Jリーグの価値向上には魅力を高め、世界での位置づけを上げることがより求められるでしょうね。
風間: そうですね。今回、川崎がAFCアジアチャンピオンズリーグに出場しましたが、アジアでのJクラブに対する注目度は高いと実感しました。まずはアジアの中で「Jリーグを見てみたい」「Jリーグにはすごい選手がいる」と多くの人に感じてもらえることが、世界的な評価につながるのではないでしょうか。

二宮: 世界戦略を推し進める上でも、しっかりと国内で底辺を拡大することが大切です。最初は10クラブでスタートしたJリーグも、今やJ1、J2、J3合わせて51クラブに増加しました。今回の代表でもFW柿谷曜一朗選手やFW齋藤学選手のように、J2で才能が開花した選手がいます。下部リーグの充実はリーグの発展のために欠かせません。
風間: 海外では下部リーグのクラブが成り立たなくなっているところも少なくない中、日本は逆に増えている。それだけ経験を積める場が広がっているんです。これはチャンスでしょう。Jリーグに求められているもの、やらなくてはいけないことは決して小さくない。その点を、このリーグに関わっているすべての人間が自覚してほしいですね。確かに他のリーグと比較すると選手年俸の問題などはありますが、いろんな部分で質を上げていけば、国内外問わず、「日本でやりたい」と思ってもらえる“伸びしろ”があるはずです。