「SXSW 2014」に見る、今後の技術・産業動向を占う10のキーワード【前編】
出展: http://sxsw.com

Twitter、FoursquareがブレークするきっかけとなったITの祭典であり、数万人が結集する「SXSW」が、今年は大きく変容した。2012年、2013年、2014年と3年連続でSXSWに参加したことではっきりと見えた、日本にとっての重要な意味合いだ。

従来のIT、インターネットなど、「インタラクティブ」なアプリ、サービスの紹介を超え、今後の技術、企業、産業、経済、社会の発展方向を明確に示す場になっていた。

今から思えば、昨年、若干の萌芽があった。それは、基調講演のトップバッターに3Dプリンターで急成長しているMakerBotのCEOが登場し、3Dプリンティング関連のいくつかのセッションが開催されたことだ。「ヘルスケア×IT」に関してもいくつかあった。

ただそれが、ご紹介するキーワード10個まとめてど~んと来た。これで米国企業がこれまで以上に世界の覇者になるお膳立てが揃ったと思われる。アクセルをふかせて全速力で突っ走る状況であるのだ。

SXSW 2014への日本からの参加者は決して多くはなく、報道もあまりされていない。報道されたとしても、現象面的なとらえ方がほとんどだ。

ウェアラブルもコネクテッドカーも個別には以前から報道されている。ただ、それらが津波のように押し寄せていること、米国企業を中心に今まさに数百兆円規模の価値創造が始まっていること、次のアップル、グーグル、Facebook(時価総額はアップル50兆円、グーグル36兆円、Facebook 15兆円)等が生まれようとしていること、日本とは桁外れの額がこれら新分野のベンチャーに投資されていることなどは十分に伝わっていないのではないだろうか(この記事内では、すべて1ドル100円換算とする)。

SXSW 2014で浮かび上がった状況は、日本企業、産業、経済にとって危機的であり、一部はぎりぎり間に合うかも知れないチャンスでもある。

出典: http://sxsw.com

キーワード1: ウェアラブル

最初のキーワードには「ウェアラブル」を取り上げたい。ウェアラブルに関してSXSW82014で64ものセッションが開催され、「ウェアラブルの年」という認識だった。

セッションの内容は、

●ウェアラブルが世界をどう変えるのか? おかれた状況をどこまで読み取ってくれるのか? 
●ウェアラブル技術によってどういうチャレンジと機会があるのか?
●物流や学習等での3DのAR(拡張現実)など、ウェアラブルによって何が可能になるか?
●健康管理用のウェアラブルをどう使って減量、体調管理、安眠等を実現するのか?
●ウェアラブルで健康管理をどのようにやっていくのか? 遠隔治療をどうやっていくのか?
●プロスポーツにウェアラブル技術をどう活用していくか?
●ウェアラブル技術がファッションをどう変えていくか?
●莫大な数のウェアラブルが広まる中でマーケティングをどう変えていくか?
●ウェアラブルの将来: 人体埋め込み型チップがもたらす変化は?
●ウェアラブルのファッション性、趣味嗜好、機能がどういうバランスになっていくか?
●ウェアラブル時代にブランドはどういう位置づけになるのか?
●スマートグラスがどう発展していくか? コンテンツをどう作り出し、どう視聴するか?
●ウェアラブル機器を設計する上で、美しさや機能等のバランスをどう取るのか?

など、ウェアラブルが社会にどういう変化をもたらすのか、ウェアラブルがどう私たち自体を変えていくのか、そしてどういう新技術、新製品があるのかの大きく3つに分かれていた。

そのどれもが、「身につけるハードウェア」という単体のものではなく、すさまじい量のデータをどう把握・分析し、プラットフォームとしてどういうサービスを提供するか、どう表現することでうまく活用するかに焦点が当たっている。

ウェアラブルは、次に述べる「IoT(モノのインターネット化)」のうち、身につけるものが対象であり、「デジタルヘルス」の重要なインプット手段、という位置づけにある。

ウェアラブルで注目された一つが、心臓の鼓動でユーザー認証をする「Nymi」だ。リストバンドとして着用している限り、自動車、スマートフォン、タブレット等のパスワード等の入力が不要になる。ジャイロセンサーを搭載しているため、自動車のボンネットを開けたり、ドア操作をしたり、支払いも自動で行うことができる。バーで好みの調合のカクテルを黙っていても出してもらうこともできる。

今年後半の発売に向けて、8000個以上を先行受注している(1個79ドル)。

スマートフォン、タブレット、PCも、手に取ったり近づくだけで自動的に個人認証できるので非常に便利だ。自分が自分であることをいっさいの操作なしで伝えることができる。

Nymiにおいては、ユーザーデータをクラウドに保存しないこと、どの機器との認証をするかすべてユーザーが指示すること、ユーザーデータをマーケティングデータとして販売しないこと、などプライバシー保持への配慮を強くアピールしている。

SXSWでは、毎年、SXSW Accelerator Awardというビジネスプランコンテストが開催され、6つのカテゴリーに分かれて、500社以上から選ばれた48社がプレゼンテーションに登場する。ベンチャーキャピタリストやエンジェル投資家も多数集まり、トークセッションやトレードショウに負けずに賑わっている。

今年のウェアラブル技術部門での優勝は「Skully」というオートバイ用ヘルメットだ。カメラを装備し、後方視界やナビの結果を前方のスクリーンに映してくれる。音声で音楽、天候表示、電話等すべてコントロールすることができる。

すでにオートバイメーカーとして有名なハーレーダビットソンとの提携が決まっており、早ければこの夏にテスト販売される。

優勝はしたものの、そこまで独創的、未来志向的、システム思考的だとは、正直、私にはあまり感じられなかった。特にこういった分野であれば、日本の企業、ベンチャー企業でも優るとも劣らない商品が開発できただろうと思うと、残念でならない。

ただ、日本のベンチャーはそもそもSXSW Acceleratorにほとんど応募しておらず(応募締切は前年の11月)、「日本の企業でも十分できた」と嘆いてもほとんど意味がないことはよく理解している。「iPhoneは自社でも作れた」と言う日本メーカーの愚は繰り返したくない。英語力の弱さ、グローバルな視点の弱さ、発信力の弱さにより、格好の場所へのリーチ、参戦そのものができていない状況にある。

国内のビジネスプランコンテスト、ベンチャー系のイベントでのピッチコンテスト(数分で発表)は多数行われ、VCからの出資も増えてはいるものの、ほぼすべて日本人であり、対象市場も国内を重視したものが多い。この状況を早く変えない限り、グローバルでの活躍は見えてこない。

SXSW2014は多方面で同時多発的に巨大市場が立ち上がっていることをはっきりと示しており、日本の大企業もベンチャーも乗り遅れ感が極めて強い。

この他のウェラブルとしては、

(1)ミニスカートやTシャツにLED等でディスプレイをつけ、スマートフォン操作で自分の好みのデザインに変えたり、Twitterのツイートを表示する。服が電話にもなる(CuteCircuitなど)

(2)エクササイズに取り組む健康志向の人が、よく眠れたかどうか、眠りのパターンがどうだったか、体調がどうか、その日の運動でどれだけカロリーを消費できたか等を把握し、その日の活動、睡眠時間やエクササイズを最適化する

(3)スポーツ選手のユニフォームや体にセンサーをつけて体調管理をしたり、筋力、跳躍力、走り方、腕の振り方、力の入れ方等を計測したりして、練習方法を最適化する。トップクラスの選手とそれ以外の選手の動作・筋力等の違いも把握できる。試合の交代タイミング、ゲームプランなどにも反映する

(4)キワモノではあるが、遠距離カップル向けに、スマートフォンをやさしくなでると遠隔操作で下着を通じてそのタッチを伝えるデモがあった。情報伝達だけではなく、形、動き、力の伝達も重要と考えられている。

ウェラブルの応用範囲は、めがね、サングラス、コンタクトレンズ(グーグルが特許申請中)、ゴーグル、腕時計、指輪、腕輪、首輪、ブレスレット、ネックレス、イヤリング、靴、靴下、下着、上着、帽子、かつら、マフラー、ヘルメット、マスク、サポーター、皮膚に貼付、腕に装着、太もも・足に装着など、非常に幅広く、今後、多方面での急展開が想定されている。

また、皮膚下数センチメートルにも送電できる画期的な技術により、心臓、脳、肝臓等へのセンサー、アクチュエータの体内埋め込み等も可能になりつつある。

ウェアラブルの技術上の課題に加えて早々に解決すべき課題としては、ウェアラブルなセンサーから提供される莫大なデータが誰のものか、利用に当たって、個人の意思とプライバシーをどう完全に保証するのか、個人のプライバシーを完全に保証しつつどうやって有用情報を引き出していけるか、といった点だ。

これらの課題解決には倫理やポリシーが深くからむ。実際にサービスを提供し、試行錯誤をしつつ社会として学習し折り合いをつけるべき部分があるし、データの蓄積量も重要であるため、早くスタートした企業、国が有利になる。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら