ファミリーマートが高齢者向けに展開 
業務提携で社会・生活インフラ機能充実へ[コンビニ宅配]

仮設住宅を訪れるファミリーマートの移送販売車=岩手県陸前高田市で12年2月

コンビニエンスストア大手のファミリーマート(東京都豊島区、中山勇社長)の宅配事業が伸びている。高齢者専門の弁当宅配のフランチャイズ「宅配クック123」を展開する「シニアライフクリエイト」(東京都港区、高橋洋社長)の宅配網を活用してスタートし、急成長する在宅配食サービスへの参入とともに、買い物が困難な高齢者向けに利便性の向上を目指している。ファミリーマートは、ドラッグストアや調剤薬局、カラオケボックスとの一体型店舗を展開するなど、他業種との業務提携によって、社会・生活インフラとしてコンビニ作りを進めている。

宅配事業は2012年12月に鹿児島市で始まり、現在、東京都豊島区・文京区、愛知県岡崎市、神戸市、岡山市の全国5地区で展開している。宅配クック123の利用者に対し、カタログに掲載したファミリーマートの商品を、弁当と一緒に配達するシステムだ。

送料は無料で、対象商品は当初、宅配クック123では提供が難しかった菓子パンと牛乳をセットにした軽食など45種類から、現在は160種類に増やした。高齢者が買い物に困る米や水など重い物や、電球や電池、大人用紙おむつなども含まれている。前日の午後6時ごろまでに注文すれば、翌日の正午ごろと午後6時ごろまでに届けてくれる。宅配と同時に利用者の安否確認も実施するなど、利用者とのコミュニケーションを重視したサービスを目指している。

シニアライフクリエイトは全国に300以上のフランチャイズ店「宅配クック123」を展開している。ファミリーマートもフランチャイズ制を導入しているが、コンビニエンスストアが宅配事業に参入するには、配送のための人件費や車両購入などの経費が必要となり、加盟店には大きな負担になる。そこで「シニアライフクリエイトの経営資源を有効に活用することで、双方に利益が見込める」として12年4月に子会社化に踏み切った。

コンビニエンスストア側には、初期投資を抑える形で宅配事業に参入できること、さらに激化する在宅配食サービス業界の中で、生活必需品も配達してくれることで、地域の競合店との差別化につながるメリットがあるとしている。実際、客単価も上昇するなどの効果を生じており、同社は「互いのインフラの特性を生かしたビジネスモデルとして成長させていきたい」と話している。

従来のコンビニエンスストアの枠を超えた他業種との展開は宅配事業だけではない。15年度までの中期経営計画に重点施策のひとつとして打ち出している。

背景にはコンビニエンスの客層の変化がある。同社によると、ファミリーマートの客層構成比のうち、50歳以上の中高年層は12年度は約30%となり、10年度に比べ約5ポイント上昇。女性層の比率も45%に高まるなど、中高年層や主婦、単身女性の利用が増加している。同社は「社会・生活インフラとしての価値を高めることが求められている」としている。

12年5月にはドラッグストアチェーン「薬ヒグチ」を展開するヒグチ産業との協業による一体型店舗「ファミリーマート+薬ヒグチ淡路町店」(東京都千代田区)がオープンしている。ヒグチ産業がファミリーマートとフランチャイズ契約を結び、登録販売者が常駐し、一般医薬品を24時間販売している。

すでにヒグチ産業を加え、ドラッグストアと調剤12社と契約を結んでいる。4月には調剤薬局一体型コンビニ「ファミリーマート+なの花薬局 新宿百人町店」を開業。より専門性を備えたコンビニエンス機能を備えた出店を加速させたい意向だ。同社は「買い物に行けない高齢者が増加する中、近くの開いているコンビニエンスストアで薬が手に入る意味は大きい」としている。

今年4月にはカラオケ大手「第一興商」〈林三郎社長)と包括提携を結び、東京都大田区に「ファミリーマート+カラオケDAM蒲田南口駅前店」をオープンした。コンビニエンスストアで購入した商品をカラオケボックスに持ち込め、飲食代を安く抑えてカラオケを楽しめるのが特徴。高齢者を中心に地域のコミュニティーの拠点としての利用が期待されている。

買い物不便地域に移動販売車

さらに11年9月には買い物不便地域での買い物支援などを目的に、移動販売車「ファミマ号」の営業を始めた。買い物に行けない人たちに商品を選ぶ楽しさを味わってもらうようにトラックの荷台を改造して、小型店舗の形態にした。

宮城県気仙沼市を皮切りに、東日本大震災で被害を受けた宮城、福島、岩手各県で活動を始めた。現在ではエリアも拡大し、長崎県や群馬県などでも移動販売車が稼働しており、全国で15台を保有している。1人暮らしの高齢者の増加など買い物難民対策が課題となっている自治体と協議を進めながら、移動販売車の導入も進めていきたいとしている。

ファミリーマートをはじめ、コンビニエンスストアは国内だけも約5万店舗に達している。すでに飽和状態との声も聞こえるが、買ったものを持ち込んで食べることができる「イートインコーナー」を設置するなど、交流の場を提供する店舗形態も増えてきている。超高齢化社会の中、社会インフラとしての機能をどこまで充実させられるのか。今後の動向が注目される。

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